弁護士だって大変なのよ

FT記事: Dearth of US corporate dealmaking hits law firmsより

FTに目を通してしていると(すいません、未だに紙媒体です笑)よくこういうネタを拾ってくるなぁ、と目線の”渋さ”に敬意を表したくなる瞬間が多々あります。

残念ながらWebだと自分の検索能力と視野に限界があるらしく、かなりの頻度で見落とし気味でして未だに紙媒体が手放せない状況です。すでに技術化されたとは聞いておりますが、見開き大のE-inkペーパーの出現を願うばかりです。

さて、本日の話題ですが弁護士事務所の話。世界的な景気スローダウンによりM&Aなどの投資銀行業務が減少している事は報道を通じてご存知かと思いますが、その影響は弁護士事務所にも及んでいます。

そして本日のマジックナンバーは119時間/月。これが何を意味するかは下記概略よりご覧ください。


<FT記事より>

ディールメーキングが激減する中、多くの法律事務所が人員削減を発表しており、米国の弁護士の請求時間はここ数十年で減少していることが調査で明らかになった。

トムソン・ロイター研究所の調査によると、米国に拠点を置く170の法律事務所のデータを追跡した結果、11月末までの1年間に弁護士1人当たりの平均労働時間は、請求可能な時間として月119時間に減少したことが分かった。これは、2007年にデータの収集を開始して以来、最も低い水準であり、当時は月平均134時間であった。

この数字は、過去12ヶ月間の企業内弁護士に対する需要の落ち込みが、費用の増加と相まって、法律事務所全体の収益性を低下させていることを強調している。調査によると、法律事務所の直接経費は2022年11月までに10.1%増加し、間接経費は10.9%増と、2008年以来最も高い水準になった。

このレポートは、ニューヨーク本社のStroock & Stroockで人員削減が発表され、ボストンのGoodwin Procterでも余剰人員削減が行われた直後のものである。シリコンバレーに本社を置くCooleyは、技術に特化した業務が劇的に減速する中、昨年数十人の弁護士を解雇し、同じく技術に特化したGunderson Dettmerは、新しいアソシエイトの入社時期を早めた。先週回覧され、フィナンシャルタイムズが見たメモの中で、Goodwinのリーダーシップは、需要が「過去数年間の異常な高さから低下」し、その結果、人員レベルが「我々の現在および予測される需要に対して高すぎる」と述べている。同事務所は2019年10月以降、在籍弁護士数を60%増やしていた

Stroockは声明で、「現在の景気減速を踏まえ、当社の各プラクティスグループとそのサービス対象となる需要について包括的な見直しを行った」と述べ、その後「パートナー以外の弁護士9名とスタッフ・ビジネスプロフェッショナル18名と別れ、退職金やその他のサポートを提供することにした」と述べている。

法律部門の見通しの悪化は、コロナウイルスの大流行が始まったときに法律事務所が着手した雇用の急増から様変わりだ。米国の大手法律事務所も近年、熾烈な人材争奪戦に追い込まれ、アソシエイトの給与引き上げを余儀なくされている。

2021年の狂乱の後、世界のディールメーキングは昨年後半に記録的な落ち込みを見せ、急増する需要に対応するために大規模な雇用を行っていた法律事務所に打撃を与えた。そして2021年には、パンデミック中に発表された景気刺激策によるM&Aブームによって、法律事務所の利益は過去最高水準に上昇した。The American Lawyerのデータによると、Kirkland & EllisやDavis Polk & Wardwellなどの法律事務所では、エクイティパートナーが平均で700万ドル以上を手にした。

しかし、トムソン・ロイターの分析によると、11月末までの12カ月間でエクイティ・パートナー1人当たりの利益は4.2%減少し、全弁護士の生産性が低下しているとのことだ。平均的な弁護士は、2022年に2007年よりも98,000ドル少ない報酬を計上したとのことである。


金利上昇期を迎えるまでは「未だかつてない忙しさ」と言われていたコーポレート弁護士業界にも景気の波は確実に影響を及ぼしているようです。

それでは今週もご自愛ください。

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