バリュエーション、その尺度が異なるということ

オルタナティブ投資への注目が集まるに連れて、大手金融期間がその運用能力の拡大に向けて様々な”ニッチ”プレイヤーに注目しています。いや、注目というより積極的に取り組もうと虎視眈々に狙っている状態ではないでしょうか。

そんな中で今回の話題は皆さんご存知のPreqinを買収したBlackrockの話題です。

FT誌面ではPreqinが売却を考えていることは報道されておりましたが、その時の売却予想=企業価値は10億ポンド前後、という報道でありました。

そして今回Blackrockが払う金額は32億ドル=約25億ポンド、という驚くべき2.5倍

なるほどなー、たかいなー、あー13倍かーなど気楽な外野の目から眺めておりましたが、え??っと一瞬息が詰まったのは、「2024年の売り上げに対して13倍」という文言。

い、EBITDAじゃ、ないのか・・・・これってITバブルの時に流行ったPSRで13倍じゃないか!ということでに気づいたわけです。

他の情報も見てみると2016年にPitchBookを買収したMorningstarが払ったのも「売上の7倍」、他にもS&P、Moody’sのバリュエーションもPSRの12倍で企業価値がついています。

それにたいしてBlackRockはPSRでみるとわずか6倍でトレードされている現実。

運用会社よりデータ提供会社の方が全然企業価値が高いじゃん!(あくまでマルチプル基準で)という事実に今更ながら気づいた私であります。

もし起業するならメインストリームの運用でなく、データ提供会社では?とオルタナ分野で密かな野望を燃やす週末となりました(空目www)


FT記事より:BlackRock to acquire UK data group Preqin for £2.55bn

ブラックロックは、英国のプライベート・マーケット・データ・グループであるプレキンを現金25.5億ポンドで買収することで合意した。この取引に詳しい関係者によると、10.5兆ドル規模の資産運用会社は、S&Pグローバルやブルームバーグを抑えてPreqinを買収した。

プライベート・エクイティ、インフラ、ヘッジファンドなど、金融市場の隅々まで詳細な情報へのアクセスを求める投資家に対し、プライベート・エクイティ・グループ、資産運用会社、大規模な情報ビジネスがサービスを提供しようと競争しているため、データ・プロバイダーの買収は近年盛んになっている。

S&PグローバルによるIHSマークイットの440億ドルでの買収(2020年)、ロンドン証券取引所グループによるリフィニティブの270億ドルでの買収(2020年)など、近年、データ・プロバイダーの買収が相次いでいる。バイアウト・グループは、ペルミラがReorgの株式の過半数を取得し、ディストレスト債務と倒産情報プロバイダーを約13億ドルで評価するなど、小規模なプレーヤーに焦点を当てている。

月曜日に発表された取引は、ブラックロックにとって、この半年でプライベート・マーケットに焦点を当てた2件目の大型買収となる。ブラックロックは1月にグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズを125億ドルで買収している。この買収は第3四半期に完了する予定だ。

Preqinとの取引は、ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)がマネーマネージャーの継続的成長に欠かせないと挙げている2つの分野、オルタナティブ資産と、パブリック市場とプライベート市場の両方の資産運用会社にリスクとデータ管理サービスを提供するブラックロックのテクノロジー部門の接点に位置する。

20年前に設立されたプレキンは、プライベート・エクイティとヘッジファンドのパフォーマンスを追跡することを専門としている。現在、約20万人のユーザーを抱え、6万人のファンドマネージャーと3万人の投資家に関するデータを提供している。同社の売上は過去3年間、毎年20%以上伸びている。ブラックロックの成長を後押ししているのは、プライベート・キャピタルの長期的なブームである。

ブラックロックはプレキンの2024年の予想売上高2億4000万ドルの13倍を支払っている。

プレキンはブラックロックの副会長に就任予定のマーク・オヘア氏によって設立された。Preqinはプライベート・エクイティ・バイヤーからの関心も集めていたが、最終的には戦略的ライバルによる買収を選択した。

ブラックロックはPreqinを独立したサービスとして維持する予定だが、そのデータ・フィードを同社のAladdinおよびeFrontリスク管理サービスに統合することも計画している。この取引は今年後半に完了する予定である。

ブラックロックのロブ・ゴールドスタイン最高執行責任者(COO)は声明で、「顧客が商品選択からポートフォリオ構築へとますます重点を移していく中、このシフトにはテクノロジー、データ、分析が必要です。」と発表している


それでは今週もご自愛ください。

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