まだあわてる時間じゃない:これでもプライベート・クレジットの話

有名漫画のセリフで「まだあわてるような時間じゃない」という一言でチームが落ち着きを取り戻すエピソードがありますが、まさに今これを伝えたい今週のFTコラム。

プライベートクレジットに焦点が当たる中で、果たして次の金融危機につながるのか?という問いに答える珠玉のコラムです。

引き続き質問攻めにあっているあなた。あわてるような時間ではございません。ぜひ下記をご参考に、反論にむけた理論武装をお願いします。


FTコラム:Private credit won’t spark the next financial crisisより

筆者はフーバー研究所のシニアフェローであり、スタンフォード大学経営大学院のファイナンス教授である。

数年に一度、金融エコシステムの新たな一角が「次の時限爆弾」と呼ばれる。今、その矛先はプライベート・クレジットに向けられている。悲観論者は、最近のドローダウンや同業界と伝統的銀行とのつながりを、2008年型の崩壊が迫っている証拠だと指摘する。投資家の恐怖は自己増幅的であり、とりわけプライベート・クレジットは、それが代替してきた伝統的な銀行融資に比べて透明性が低いため、なおさらである。しかし、データは、この資産クラスの健全性について、見出しで語られているものとはまったく異なる姿を示している。

Gregor Matvos、Tomasz Piskorski、そして私は、過去四半世紀にわたる約1,300本のプライベート・クレジット・ファンドと、その裏付けとなる約9,000件のローンを調査した。これは市場全体のおよそ3分の2に相当する。その結果、プライベート・クレジット・ファンドは、過去の金融危機を引き起こしてきた金融機関とはまったく異なる構造を持っていることが分かった。

まず、金融機関が景気後退を乗り切れるか、あるいは危機を引き起こすかを左右する最も重要な変数であるレバレッジから見てみよう。2008年以前、最大手の金融機関は30倍ものレバレッジをかけていた。住宅価格が小幅に下落しただけで、薄い自己資本のクッションは消滅し、破綻がシステム全体に連鎖した。危機後の改革により、現在では銀行により多くの資本保有が義務付けられ、レバレッジはおおむね8倍程度に制限されている。これは資産1ドル当たり約12セントの自己資本に相当するが、それでも小幅な損失であっても、預金者を守るバッファーは急速に毀損され得る。

プライベート・クレジット・ファンドは、これよりもはるかに強固な資本基盤の上に成り立っている。私たちの研究では、プライベート・クレジット・ファンドの総資産に対するレバレッジ比率は通常、およそ1.25倍であることが分かった。銀行から借入を行っているファンドでも、資産1ドル当たりおよそ65〜80セントは負債ではなく自己資本で賄われている。つまり、プライベート・クレジット・ファンドは、債権者に実質的な影響が及ぶ前に、非常に大きな損失を吸収することができる。損失はまず短期債権者ではなく、長期志向のエクイティ投資家が負担するため、プライベート・クレジット・ファンドは、ボラティリティや景気後退に直面しても本質的により安定している。

批判派はまた、プライベート・クレジットと銀行とのつながりが、金融システム全体に不安定化ショックを波及させる経路になり得るとも指摘している。私たちの研究によれば、こうした連関は限定的である。プライベート・クレジット・ファンドは、持続的なレバレッジの源泉としてではなく、キャピタルコールのタイミング管理など、特定の目的のために短期のクレジットラインを通じて銀行から借り入れる傾向がある。連邦準備制度は、プライベート・クレジット・ファンドのような金融会社が危機に見舞われ、クレジットラインを全額引き出すことを余儀なくされた場合に、銀行に何が起こるかをモデル化した。大手貸出機関は十分な自己資本を維持していた。FRBの結論は明快だった。深刻な景気後退局面においても、プライベート・クレジットは銀行システムに対するシステミック・リスクをもたらさない、というものである。

それでも、一部の市場関係者は、業界危機はすでに到来していると主張している。個人投資家は資金の返還を急いでいる。最も大きな解約圧力に直面しているファンドは、四半期ごとの払戻しを資産の約5%に制限している。こうしたゲート条項は投資家に不安をもたらしているが、それらはまさに、薄い市場で資産を割安価格で強制売却することを防ぐために存在している。ファンドがゲートを発動する時、システムは設計どおりに機能している。すなわち、ストレスを増幅させるのではなく、減速させているのである。

これは、長期資産を預金者が要求すればいつでも引き出せる短期負債で調達している銀行とは、構造的に異なる。債務の返済期限と資産の流動化可能時期とのミスマッチは、多くの信用危機の背後にある構造的欠陥である。プライベート・クレジット・ファンドには、そうした緊張関係は存在しない。なぜなら、資本は個別ローンの期間を大きく超えてコミットされ続けるからである。債務と資産は整合的な時間軸で動いており、強制的な大量清算が起こる可能性を大幅に低下させている。

透明性については、正当な疑問が存在する。バリュエーションは市場で検証されたものではなく、モデルに基づくことが多いため、リアルタイムでの裏付け資産の質が見えにくくなる可能性がある。このリスクは現実に存在する。ただし、それは突然の崩壊ではなく、徐々に締め付けが強まるという形のリスクである。投資家がバリュエーションに疑問を持ち始めたり、ファンド全体で損失が蓄積したりすれば、資金流入が鈍化し、信用供給が縮小し、銀行、保険会社、年金ポートフォリオを通じてストレスが間接的に波及する可能性がある。

今後数カ月のうちに、一部のプライベート・クレジット・ローンが不良化する可能性は高い。一部のハイイールド債も同様であろう。それは信用サイクルの終盤に起こることである。しかし、投資家や規制当局は、個別の破綻に過剰反応したり、それをシステミックな脅威と混同したりすることには慎重であるべきだ。プライベート・クレジット・ファンドと前回の金融危機の主犯との違いは、類似点よりもはるかに示唆に富んでいる。本当の教訓は、リスクが消滅したということではなく、リスクが再配分されたということである。


それでは今週もご自愛ください。

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