環境対策”済”ですか?エネルギー投資の第一声

2021年1月28日付けFT記事 LNG tycoon urges energy sector to clean up act

すべての国家においてエネルギー政策は国政の要諦を成すものであると思いますが、輸入に依存する我が国においては特に重要であろうかと思います。

他方、輸出する方からみますと、いわゆる”戦略物資”という見方ができ、単なる輸出財でなく、政策と輸出を一体として”影響力を行使するツール”なのですかね。つまり、「言うことを聞かせるための武器」とも言える政治的資産でもあります。

すいません、なんだか難しくなりました笑。

今日の話題はアメリカのエネルギー政策です。先日のブログで化石燃料に対する環境団体の圧力が高まっている事に触れましたが、エネルギー”輸出”大国アメリカでも新政権で2つの動きが見えてきました。

キーワードは環境対策”済”か否か

エネルギー業界の有名人Charif Souki氏に言わせると、化石燃料に対する世間の圧力とバイデン政権により、エネルギー業界はより環境対策を強化せざるを得ないだろう、とのこと。

シェールガスを海外に輸出するという壮大なプロジェクトを先導したカリスマは強いトーンで警告します。

彼が率いる会社、Tellurianは海外に天然ガスを輸出する施設を建設中ですが、プロジェクト総額は$16.8Bn、1兆7000億円という壮大な規模です。

この設備の特徴はガス掘削において排出されるメタンガスを完全にゼロ。つまり’complete ban’できるクリーン性です。米国だけでなく、欧州でも活発な炭素税をゼロにできる。

この視点をもつと、昨年フランスのエネルギー会社Engieがヒューストンのエネルギー会社NextDecadeとの約7000億円もの契約を破棄した理由がわかりそうです。フラッキングによる環境破壊を懸念しての撤退であります。

バイデン大統領は就任初日にKeystone XL計画を止めた

これまでトランプ政権においては、米国の海外における影響力行使と一体となってLNGの輸出が推奨されてきましたが、欧州に影響力を強めるロシアに対するエネルギー関与抑止政策としても機能しておりました。

ただしそれは環境対策を「相当甘めに」許容した結果でもあります。

この基準が一転、バイデン政権では環境対策を大幅に強化これまでのやり方では算出・輸出が相当困難になると見られています。新たな対応が迫られている。

新大統領が就任初日にサインした、巨大石化燃料のインフラ・プロジェクト:Keystone XL pipelineの停止がすべてを表しております。あのパワフルな、エネルギーロビー団体も抗しきれなかった。

副大統領時代から大きく変わる

オバマ政権時代の副大統領としてLNG輸出の旗頭であったバイデンさんでしたが、大統領の今となってはそのスタンスを大きく変えると見られています。

環境の優先度が私の想像以上に高いんです。

依然として天然ガスが米国の戦略資源である事は変わりありませんが、こと投資という視点においては「環境対策済ですか?」という質問の重要性がこれまでになく高まっている。まず第一声はここから始まるミーティングが増えそうです。

今日もよい一日を。

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