アジアPE業界の勢力地図 :BPEA, EQT

Financial Times記事より:
EQT/BPEA: Asia deal boosts global ambitions for Swedish private equity

先週オルタナティブ業界を驚かせたニュースといえば(特にアジア地域ですが)本拠をスウェーデンに置くPE運用会社の雄、EQTが発表したBaring Private Equity Asia”BPEA”社の買収です。現金と買収後の会社株を対価とした総額68億ユーロの買収案件が報道されています。

このBPEA社はアジアに事業基盤を置くバイアウト運用会社として有名ですが、ファンドレイズ規模という尺度で見ても成長著しい運用会社です。2005年の3号ファンドはUSD300mm程度だったものが、2021年ビンテージの8号ファンドでは、すでに85億ドルを超えるレイズを行なっており、最終的には100億ドルを超える見込みとのこと。これはすごい!これより大きいアジア特化ファンドはKKRのアジア戦略6号(150億ドル)、Hillhouseの110億ドルくらいとの記事報道。

さて、当社Diagonalとして注目しておきたいのは規模もさることながら、そのバリュエーション、どれくらいの価値評価で両者が買収合意しているかという視点です。

FTの記事によりますと、買収前のEV/EBITDAで比較した場合、EQTは20倍/BPEAは15倍での評価(2023年の想定EBITDA基準)であったそう。PEの業界で見ますと他社ともそれほど差がないようですが、面白いのはインフラ投資を主力とするAntinが30倍の評価を得ている点。これは管理報酬・成功報酬の安定性が評価されているのかもしれません。

その15倍評価であったBPEAを今回32倍の評価(基準が異なる2021年度の業績に対して)で購入したのが本買収案件となります。EQT株式の16%相当の希薄化を招くディールであったにも関わらず、株価は8%程度上昇と市場評価もサポート基調。EQTさん、グッドディール!とお慶び申し上げたい所です。

これはBPEAさんは足元の成長、なんと年間ベースのAUMの伸びが平均25%!!!という衝撃の数字を踏まえれば、安い買い物でしょう。今後有望と考えられるアジアのバイアウト市場に対して、欧州EQTがとった大胆な買収戦略。進出が遅れている他社にとっては大きな刺激を与えられるディールとなること間違いなし、と思います。

中国・香港をめぐっては地政学的な見地も含め、様々な議論があるとは承知しておりますが、一方、汎アジアという視点で見ますと投資家としては外せない。その意味で同エリアにおける今後の勢力地図を見定める意味でもこの話題に注目せざるを得ない、のです。ぜひ今週はこの視点を皆様と共有しておきたいと思います。

追伸
FTの別記事で見かけた数値が要チェックでございました。
EQTはAUMが買収前で734億ユーロとの事でして、これに対して管理報酬が350-375mmユーロだそうです。なるほど〜AUMに対して50bps相当が平均的な管理報酬水準なんですね。これはメモメモっと。

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