世界的なオルタナティブ運用会社Black Stone Group Inc.さんについての独自調査、第3回目です。
データはすべて10-Kを元に作成しています。(言うまでもありませんが内容の正確性は保証しかねます。その点あらかじめご容赦願います)
Writer in Chief: Takashi Miura
世界的なオルタナティブ運用会社Black Stone Group Inc.さんについての独自調査、第3回目です。
データはすべて10-Kを元に作成しています。(言うまでもありませんが内容の正確性は保証しかねます。その点あらかじめご容赦願います)
Writer in Chief: Takashi Miura
これまでブラックストーンの事を整理して来ましたが、ライバルと比較するとどう見えるのでしょう?
今回はそんな視点で、ライバルの一角、KKRと比べてみます。
KKRの特徴は自己投資の割合が他の投資会社に比べて大きいことではないか。自己投資に積極的な経営姿勢をを反映してBSと比較すると業績やバランスシートの変動が高いと言える
過去5年間の預り資産残高推移を見ると、2015年以降、年平均15%と高い伸び率を維持している。伸び率の高いのはクレジットを中心とするパブリック部門で年率18%の増加。一方、PE・実物資産を中心とするプライベート部門の伸び率は13%となっている
資金フローをみると全体的にクレジット資産での増加が多い。利回り低下・スプレッド縮小を受けて、クレジットの中でも特にレバレッジドクレジットの伸び率が高い
KKRの業績は2016年に底を打ち、2019年には営業収入・投資利益とも前年から大きく伸び、大幅な増益を達成している。KKRの預り資産/自己投資勘定倍率は10倍程度であり、ブラックストーンやカーライルと比較すると高い水準
自己投資資金につき不足分を借入金で補うため、結果としてDERはやや高め。直近では0.9倍程度にまで上昇してきている。信用格付けはA格を維持しており、長期安定資金の調達が可能となっている
今回はブラックストーンとの比較対象としてKKRを見ていきますが、まずは預かり資産(AUM)を眺めていきます。
KKRは投資セグメントを2つに区分していまして、①プライベート、②パブリックとなります。そのプライベートは主に企業投資とインフラ・不動産などの実物資産投資、そしてパブリックは主にクレジット戦略で構成されているとご理解ください。
過去5年間の預り資産残高の推移を見ると、全体としては年平均15%と高い伸び率を維持しています。伸び率の高いのはクレジットを中心とするパブリック部門で年率18%の増加。一方、PE、実物資産を中心とするプライベート部門の伸び率は13%となっています。
ブラックストーンは過去5年の残高がCAGR14%でしたので、ほぼ同じくらいですね。ただ同社のPE事業は同期間で21%ペースで伸びていますので、KKRのプライベート部門は少し元気ないかな?どちらかと言うとクレジットが比較優位にあるのかもしれません。
KKRの資金流出入をみるとパブリック資産、つまりクレジット戦略での増加が目立ちますね。特に利回り低下・スプレッド縮小を受けて、パブリック資産の中で増加率が高いのはレバレッジドクレジットであると思われます。2015年はプライベート資産はネット・アウトフローなのですね。ちょっと意外です。
資産区分が違うので一概に比較できませんが、第2回で触れたブラックストーンの資金流出入グラフも比較のために貼っておきます。(再掲)
KKRの場合は手数料を徴求できる預り資産が全体の70%から80%の間で推移しています。このあたりはブラックストーンと同水準ですね。2017年に一度70%にまで低下していますが、2019年には74%にまで回復しています。これは手数料徴収対象となる預り資産比率の高いパブリック資産の増加によるものだと思われます。
さて、気になるファンド運営会社としてのKKRの業績です。
トレンドとしては2016年に底を打ち、2019年の当期利益は46億ドルに達しています。2018年は手数料を主体とする営業収入の落ち込みがありましたが、投資利益の増加と人件費の抑制でカバー。小幅な減益で抑えています。2019年には営業収入、投資利益とも前年から大きく伸び、大幅な増益を達成しました。
ブラックストーンと比較すると、KKRの業績は投資損益によって大きく変動する構造となっているのが特徴だと思います。ただ、2016年以降は手数料の収入比率が高まり、投資利益とのバランスが取れているのではないでしょうか。この結果、業績の安定性は向上したと言えそうです。2016年を挟んでKKRはビジネスモデルを修正してきたのか?
繰り返しになりますが、KKRの特徴は自己投資を積極的に行うことになると思います。KKRの預り資産/自己投資勘定倍率は10倍程度であり、総投資額の10%を自己投資していることになります(2015年は会計基準変更前で非連続)。ブラックストーンはここが概ね5%程度でした。
念のため、2016年の会計基準変更により自己投残高は半減しています。その意味では2015年はあまり参考にならないことを申し添えておきます。
KKRの開示資料で面白いのはここではないでしょうか。PEとクレジット関連に自己資金を積極投入してきている姿が浮かんできました。この辺りは相場観といいますか、ファーム・ビューを反映している気がします。
自己投資資金の不足分を借入金で補っているため、結果としてDERはやや高めです。直近では0.9倍程度にまで上昇してきています。ブラックストーンと比較すると自己資金投資比率が高いということはより「セイム・ボート」性を強く打ち出しているのかもしれませんね。
さて、本日はブラックストーンの好敵手KKRとの比較により、両者の違いを考えてみました。KKRは1976年創業だったかと思いますが、PEの草分けとして自分たちのスタイル、つまりセイムボート性をより全面に打ち出している印象を受けます。またPEだけでなく、クレジット戦略の成長性も高い。必ずしもプライベート資産専業と思っていないのではないでしょうか。
本日はここまでと致します。