投資戦略

Brookfieldの研究 Part2

第2回目 ブルックフィールドの全体感をつかむ

前回ではブルックフィールド社の歴史をなぞり、組織図まで進みました。

ブラジル生まれ、カナダ育ちの同社ですが、現在の社名になったのは2005年です。事業として5部門あることにも触れています。今回はその”会社の輪郭”を描いてみようと思います。

今回も10-Kやウェブで取れる開示資料を参照しながら進めていきます。正確性については保証できない点を予めお許しください。

Writer in Chief: Takashi Miura

ブルックフィールドの特徴

特徴を理解するキーワードは5つ

(1)巨大なバランスシート

PEに代表される一般的な投資ファンドでは非連結のファンド運営が基本です。

この場合は運用会社(GP)のバランスシートに計上されるのは、出資持分(あれば)だけになるのですが、ブルックフィールドは自己投資を積極的に活用し、自社バランスシート目一杯使いながら資産管理を行うビジネスモデルと言えます。

預り資産残高、いわゆるAUMではブラックストーンと同じくらい(約$540Bn)なのですが、ブルックフィールドの会社バランスシートはブラックストーンの約10倍もあるんです。こちらご覧ください。ブラックストーンには存在しない巨大な「有形固定資産」「投資固定資産」がBSに計上されています。

ブラックストーンとブルックフィールドのBS比較

ブラックストーンとブルックフィールドのBS比較

(2)マネジメント・スタッフの数がすごい

グラフの中の有形固定資産はインフラ設備が該当します。これは巨大・複雑なものが多いので、その管理・運営を行う関係上、従業員数がすごいことになってます。

参考までにブラックストーンは従業員数が2905人であるのに対し、ブルックフィールドは約15万人(2019年末)と圧倒的です。雇用という観点からみても超巨大企業ですね。

(3)上場を通じた資金調達に積極的

先ほど自社バランスシートを積極活用するビジネスモデルと説明しましたが、個々の事業部門が大きく成長しているので、足りない分はファンドを上場させ公開市場からの資金調達を増やす戦略がとられています。*ブルックフィールドAMの持分

Listed Funds

もっとも、経営陣はこのあたりを柔軟に考えており、先日のブログで触れた上記BPYは自社保有以外の持分を59億ドルで買収することで非上場化に舵を切っています。

(4)キャピタルゲインに依存しない

収益構造もPEファンドとは大きく異なっています。一般的なPEファンドにおける安定収入=ファンドからの管理手数料ですが、BSを積極活用するブルックフィールドの場合は投資先からの”事業収入”になります。定義はやや異なりますが、”安定”収入を比較したグラフがこちらです。

総収益に占めるフィー収入の割合(ブラックストーンと比較)

Fee割合

ブラックストーンと比べると総収入に占める安定収入=事業収入の比率が高いですよね。キャピタルゲインに依存しない同社の姿が浮かんできました。

(5)ノウハウの蓄積と政治力

ブルックフィールドの母体は電気・輸送事業開発、運営、管理会社でありました。この金融機関ではない出自が同社の強さに思えます。

インフラ資産はもともと収益性が低い上、規制や政治情勢の正確な把握が必要など、オペレーションに関する複雑なノウハウの蓄積が同社を押し上げた理由かもしれません。この点については別の回で考えてみたいと思います。

インフラ投資の面白さ

少し回り道になりますがお付き合いください。

インフラ投資の背景

道路・港湾設備・空港など大規模社会インフラの整備は政府の重要な役割の一つでありますが、社会インフラが整備され、成熟していくとインフラ事業全体でみると新規建設から管理運営に移っていきます。そこで政府にとっては管理運営を民間に任せ、新しい新規プロジェクトに注力するという流れが先進国で生まれてきました。この結果、社会インフラの管理運営を民営化する動きが活発化し、その保有・管理を行うインフラ投資会社が求めれています。

インフラ資産の特徴

そうした流れでインフラ資産を投資の観点で観察してみると、こんな特徴が見えてきます。

  • 独占的なフランチャイズを確保できることで安定的なキャッシュフローが見込める。ただし公共性の観点から事業の収益性が低い
  • 投資額は巨額になることが多く、大部分を有利子負債で資金を長期調達する
  • 建設計画は税金あるいは制度化された料金徴収を前提行われるため、購入者・管理者である運営会社も規制政治の影響を強く受ける

地域分散が面白い

このような特徴を踏まえながら、ブルックフィールドの地域分散を眺めてみると面白いんです。

AUMの地域分散

AUMの地域分散(2019, $Bn)

資産規模を増やしていくためには世界規模で投資活動を行う必要がありますが、投資ポートフォリオの半分以上を占めるアメリカ以外にご注目ください。

一般的なPEなどの会社と異なり、カナダ、南米(ブラジル、コロンビア)中東、ヨーロッパ、アジア太平洋の資産が多いと思いませんか?

他のアセットクラスでは南米や中東を投資資産として持つことは難しいかもしれない(ソブリン債を除く)。特に南米あたりはブラジル生まれの同社の特徴が生かせそう。不動産投資部門とは分けて考える必要がありますが、ブルックフィールドの有形固定資産、つまりインフラ投資は地域分散の観点からみても面白い。

このあたりは米国・ヨーロッパ(イギリス・ドイツ)が中心のバイアウトファンドと比べて、あるいは組み合わせて考えたい所ですよね。(あくまで地域分散の観点です。想定リターンが全く違うことは念のため申し添えておきます)

収益ドライバーは2つ

では地域分散を頭の片隅におきつつ、収益ドライバーを考えてみます。事業収入=フィー収入比率の高さがブルックフィールドの特徴でした。キャピタルゲインに依存せず、どうやって収益=リターンをあげていくか。

管理コスト削減

一つ目の収益ドライバーは管理コスト削減です。

インフラ設備を建設する場合は行政区分ごとに整備し、地元企業も優遇するのでどうしても高コストになります。そこで行政区分に縛られない運営が可能となれば、最適材の投入によりコスト削減の余地が生まれそうです。

また同じようなインフラ資産を複数保有すると、購入共通化や、ノウハウ・人材の共有を通じて更なるコスト低減も可能でしょう。つまり、行政区分に縛られず、複数の資産を管理できる運用者であれば収益性を向上させることができることになります。

柔軟な資金調達能力

収益ドライバーの2つ目は資金調達コストの低減です。

行政の高い信用力=資金調達コストの低さは魅力ですが、実際の資金調達は硬直的な制度が邪魔をして高コストになることが多い。洗練された運用会社が様々な手法を駆使して、低いコストでリファイナンスすることで収益力を向上させることができます。

コスト削減能力と資金調達能力に注目すべし

つまるところブルックフィールドの凄さを理解するために1)コスト削減能力 2)資金調達能力を眺めていけば同社の強さ、あるいは他社との違いが見えてきそうです。

本日はここまでとさせて頂きます。

よい一日を。

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