投資戦略

Partners Group:常連に支えられた名バイプレイヤー

きらりと光る個性”Partners Group”に迫る

今回はFoFで有名なPartners Groupに迫ってみたいと思います。

こちらは持株会社がドイツで上場しておりますので、今回も公開資料をもとに論考を重ねて参りたいと思います。正式名称はPartners Group Holding AG(SIX: PGHN) となりますが、資料を読み込んでいくと同社競争力の源はどうやら”顧客志向”にあるのでは?と思えてきました。

Writer in Chief:Takashi Miura

まずは概要をおさらいしておきましょう。パートナーズ・グループ・ホールディングス(以下パートナーズ)は世界各拠点に配したPartners Group各社を束ねる大手運用会社であります。PEやインフラなど未公開資産への投資に強みを発揮することで高い成長を遂げてきています。

事業セグメントは大きく4つに分けられPE/PD/RE/Infrastctureというシンプルな事業区分を採用。投資はプライベート市場に特化しており、高い期待利回りを提示する一方で、運用期間中の流動性が低い運用商品が中心です。

意外?創業者はGS出身

これは私も知らなかったのですが、創業者はGSチューリッヒ支店に在籍していた同僚たちでした。概要はこんな感じです。

パートナーズは1996年1月、ゴールドマン・サックスのチューリッヒ・オフィスの同僚であったMarcel ErniとAlfred Gantner、そしてUrs Wietlisbachの3人が創業した会社。当初はスイスを中心とする欧州投資家向け大型プライベート案件を取り扱うことで業績を伸ばし、2006年3月にはスイス証券取引所に上場(SIX: PGHN)した。そして2007年にアメリカ合衆国に本拠を置くPension Consulting Alliance Inc.の一任運用ビジネスを取得。2013年5月にはイタリアの同業Perennius Capital Partnersを吸収合併した。

いやー、創業してから10年で上場ですか。素晴らしい成長ですね。これまで取り上げたBlackstoneやCarlyleに比べても10年ほど後発の会社ですが、きっちりとオルタナティブ投資の時流を掴んだのでしょう。目の付け所がよかった。そしてきっと創業者たちの能力が抜きんでいたのでは?と想像します。

さあ、そしてここから会社の中を覗いてみますよ。

預かり資産は順調に拡大中

同社の預り資産(AUM)は過去5年間平均17%の高い伸びを記録し、2021年6末では1,190億ドルに達した。感覚でいうとアポロ・Aresの半分くらい?という感じですかね。視覚化してみると綺麗に右肩上がりのグラフが出来ました。

出典:同社アニュアルレポート

そして先ほど申し上げた4つの事業分野ごとの預かり資産のブレークダウンです。

出典:2021上半期同社開示資料より

PE事業が全体の半分と主要事業であることがお分かりになるかと思います。実はシェアだけでなく伸び率も高いのが同社の特徴でして、2021年6月末残高の対前年比伸び率では31%と他の資産クラスの倍程度となっています。この辺りはApolloの記事と併せて読んで頂くと更に面白くなるかも知れません。セグメント別のAUM推移も視覚化しておきます。

逆にいうと、他の資産クラスの伸びが殆ど見えない点が気になりますかね。こちらも出所は2021年上半期の決算プレゼンテーションですが、セグメント別残高のドル建開示は2018年からである点にご注意下さい。

顧客志向こそが強みに見える

全体の預かり資産を眺めて頂いたので、少しずつ同社の核心に迫って参りたいと思います。

どうやら出自を辿っていくと、パートナーズは投資家からのアセットクラス要望を満たす形で”案件を見つけてくるスタイル”から始まっており、その他多くの競合のように、案件・ファンドの存在を前提として投資家を募るビジネスモデルではなかった事に気付かされます。これにより

  1. 投資家との信頼感が生まれ、継続的な取引関係が構築され、顧客の要望を深く理解することで、確度の高いファンドレイズが実行できた
  2. 投資を行うファンドの立場で考えると、確度の高いファンドレイズが期待できるので、パートナーズに優先して投資案件・ファンド設立を持ちかける誘因となった
  3. さらに見込み投資が少ない分、つなぎ融資・レバレッジを利かす必要が小さく、運用会社の財政体質も健全に保てるという強みにつながった

こんな要素が見えてきます。いいこと尽くめに思えますが、普通このような顧客ドリブン型の運用会社はAUMの残高が小さくなりがちだと思います。洋服の青山がビスポーク・テーラーよりも多くのスーツを売る様に、効率性を考えると”オーダーメード”は手間がかかる割には収益性が低い、というのが一般常識かと。

確かにパートナーズは大手PEファンド等と比べるとAUM残高は小さいのですが、ところがどっこい、そのAUM伸び率は米国大手PE3社を上回ってるんですよ

大手PE会社とのAUM比較

2015年の預かり資産を1とした場合の残高推移

出典:各社10-K,アニュアルレポートより抜粋

これ面白くないですか!

さらに興味深い点があります。それは管理報酬です。

管理報酬は高いレベルを維持

管理手数料率が高いんです。これこそフランチャイズの強みと思いますし、ビースポークで投資家からの依頼に基づく案件組成割合がAUMの2/3を占めていることが背景だと考えられます。普通は管理手数料率引き下げ圧力に悩むのですが、2020年の時点でも管理手数料率は1.2%を確保しており、大手と比較しても良好な水準に見えます。

支持する顧客の姿

それでは同社の顧客志向に共感を寄せる顧客たちをみてみましょう。この辺りは私的年金、公的年金、ファミリーオフィスなどいつもの顔ぶれですが、下のグラフをみて何か気づきはありませんか?

パートナーズの顧客基盤(AUMシェア、2021年6月末現在)

ちょっと区分けが分かりづらいのですが、個人とファミリーオフィスの比率高くないですか?

これはスイスという市場の特性を反映していると思いますが、どうやらパートナーズを支える顧客はビスポークを好む個人リッチ層とファミリーオフィスの姿が浮かんできました。

業績は堅調そのもの

業績は堅調に推移中でして、2020年には前年の大型EXIT案件の反動で減収減益となっていますが、2021年1Hの営業収益については対前年同期比伸び率は81%と再び成長軌道に戻っております。

出典:アニュアルレポート

ここで内訳にもご注目頂きたいと思います。営業収入のうち、預かり資産残高に連動する管理手数料が59%を占めており、業績の安定化に寄与しています。それに加えて成功報酬の収益も増えてきており、全体的な利益拡大貢献中。(出典:アニュアルレポート)

今後のチャレンジ

さて、これまでは順調だったパートナーズの将来を展望してみましょう。顧客志向という強みを生かして事業拡大を続けてきましたが、もちろん課題も見えてきます。

安定している年金顧客のAUMシェアが低下を続けておりまして、2021年6月末には50%程度にまで低下しているんです。変わってシェアを伸ばしているのがアセットマネージャーやデストリビューション・パートナーズなどの販売仲介業者なのですが、このセクターは顧客の志向の変化が大きく安定性に欠ける傾向があります。この辺りは事業・業績構造に変動性が高まる要因と考えるべきではないでしょうか。

出典:アニュアルレポート、2021年1H決算プレゼンテーション

その意味ではもし私がパートナーズの経営者であれば?という視点で考えてみてしますのですが、有力年金を多数かかえる伝統資産運用会社との合併もしくは経営統合を通じて、私的・公的年金チャネルおよびSWF顧客の拡大を図るという発想に行き着きます。特にアジア地域の顧客の拡大については相当伸び代があるのでは?と思うのです。パートナーズの顧客の所在地毎に区分けした、下のグラフをご覧ください。

地域的な偏りが強く感じられますよね。すでに日本の金融機関とも強固な関係を築いているパートナーズですが、もしかして本格的な提携があり得るかも?と感じる運用会社です。もし本邦金融機関の読者でピンと来られた方。その際は地域的な補完性があるよ!と声を大にして交渉をお願いします笑。

それでは本日はこの辺りで。皆様ご自愛ください。