資産運用額1ドルあたりの収益、なんて刺激的な話題が飛び交う世界の中で、やっぱり運用会社の合従連衡から目が離せません。
再編初期に見られた、大手がプラットフォーム化を進めるという「大が小を飲み込むディール」に加えて、生き残りをかけて小が中規模のファームに買収を仕掛けるという、「ナッシング・ルーズ的な一撃離脱ディール」も散見されるようになり、まさに業界全体が揺り動かされる毎日です。
特に老兵は死なず(失礼!)の代表格であるペルツさんが仕掛ける(現経営陣にとって)いやーな攻め方を見るに、やっぱり上場会社の経営者って大変だわ、と同情の念すら湧いてまいります。
AIの伸長という新しいテーマも加わり、巨大な資金調達を行ったVC大手までが運用会社の再編に殴り込んでくる世界。業界を揺さぶるマグニチュードは加速するばかりです。
FT記事:Nelson Peltz’s bidding war highlights $25bn wave of asset manager consolidationより
ネルソン・ペルツ氏を巡る争奪戦が浮き彫りにする、250億ドル規模の資産運用業界再編の波
コスト上昇と競争激化を背景に、規模拡大を目指す世界の資産運用会社の統合案件は、昨年の取引総額を大きく上回るペースで進行している
ネルソン・ペルツ氏率いるトライアンが昨年末、ジャナス・ヘンダーソンに対して74億ドルの買収提案を行った際、市場関係者の多くは、ビクトリー・キャピタルが割って入ってこの案件を奪いに来るとは予想していなかった。
数週間にわたる攻防の末、トライアンと、ベンチャー企業ジェネラル・カタリスト主導の投資家グループによる80億ドルの全額現金による引き上げ提案が、テキサス州拠点の投資会社による86億ドルの現金・株式混合提案を打ち破った。
しかし、この激しい買収合戦は、資産運用業界を席巻している再編の波をこれまでで最も明確に示すものだった。ファンドハウスが世界規模でのスケール拡大を急ぐ一方、プライベートエクイティ会社は成長余地のある大西洋横断型ビジネスを次々と狙っている。
不安定な市場環境にもかかわらず、今年第1四半期の世界の資産運用会社のM&A総額は約250億ドルに達しており、Dealogicのデータによれば、これは2025年通年総額の半分超に相当する。
ジャナスを巡る争いが始まる数週間前には、相互会社系の金融サービス企業が保有する米国のヌヴィーンが、ロンドン拠点のシュローダーに対して99億ポンドの買収提案を行った。
この取引に近い関係者らは、2兆ドル規模の資産運用会社を生み出すことによるスケールの必要性、そして米国、欧州、アジアにまたがるプレゼンス構築の必要性を指摘している。
コスト上昇と低コストのインデックス連動ファンドとの競争激化が、業界の数兆ドル規模の巨大プレーヤー以外の伝統的な運用会社を圧迫している。また、アクティブ運用会社は市場ボラティリティ上昇への対応も迫られている。
バークレイズの株式リサーチアナリスト、ベン・ブディッシュ氏は次のように述べた。
「業界全体がかなり一貫した手数料圧力にさらされている。投資信託からETFへ、アクティブからパッシブへ、という流れがその背景にある。」
「要するに、成長が難しい業界では、とりわけ規模が重要だということだ。」
アドバイザーらは、こうした圧力がさらなるM&Aを後押しするとみている。大手は新たな地域やプライベートマーケットでの機会を模索し、小規模事業者はじり貧を避けるために統合へ向かうという見立てだ。
米国系法律事務所のある企業法務弁護士は、伝統的運用会社とオルタナティブ運用会社の双方に触れながら、「業界では今後さらに多くの再編が起きると確実に見ている」と語った。さらに「案件のパイプラインがかなりある。おそらくここ数年で最も多い」と付け加えた。
業界関係者は長年、激しい再編期の到来を予想してきたが、足元で活動が加速していることは、それがついに現実化しつつある可能性を示している。
この傾向は欧州で特に顕著で、今年に入ってすでに61社の資産運用会社が買収または統合され、総額は190億ドルに達している。これはDealogicによれば、2025年通年の143億ドルを上回る。
米国でも、この3か月で合意された案件数はすでに昨年の件数全体のほぼ3分の1に達しているが、案件金額はより小さい。
より多くのファンドグループが、通常は上場株式や債券よりも高い手数料を取れるプライベートマーケット商品へ参入するため、戦略的買収を進めている。近年では、世界最大の資産運用会社ブラックロックが、プライベートクレジット大手HPSを120億ドルで、インフラ投資会社グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズを125億ドルで買収した。
しかし、公開市場とプライベート市場のこの融合は、小規模な株式・債券中心の運用会社に対し、他社との統合か、さもなければ取り残されるかという一段の圧力を加えている。
前出の弁護士は次のように述べた。
「大手にはワンストップで何でも揃うという強みがある。」
「資金は、規模を持つ大手資産運用会社に多く流れ込んでいる。彼らはさまざまなことに挑戦できるし、うまくいかなくても大勢に影響はない。プライベートクレジットの買収や保険資産の取得のような、完全なボルトオン買収もできる。」
また、運用資産残高がおおむね500億ドル程度の中堅資産運用会社については「まとまっていくことになるだろう」とし、「手遅れになる前に売るか、立ち止まらないために買うかの選択を迫られている」と語った。
あるバンカーは、資金力のある米国の運用会社には依然として買収意欲が強い先が多いと指摘し、連続買収で知られるフランクリン・テンプルトン、Tロウ・プライス、PGIM、メットライフのような企業は「依然として世界展開の野心を持っている」と述べた。
今後さらに取引が続く兆しとして、ビクトリー・キャピタルはジャナスを巡る争いでは撤退したものの、他の同業他社の買収を引き続き目指している。
同社は、「規模、スケール、商品拡充、そして世界各地での販売網へのアクセスを通じて会社の競争力を高める取引を引き続き追求する」と述べた。
欧州でも各社は規模拡大を急いでいる。ロンドン拠点のジュピターが昨年、小規模ライバルのCCLAを買収したような、ボルトオン型買収を進める企業もある。
一方で前出のバンカーは、BNPパリバによる昨年のアクサ・インベストメント・マネージャーズ買収(51億ユーロ)が、大型案件を模索する資産運用会社からの問い合わせを一気に増やしたと指摘した。
アドバイザーらは、地政学的要因がドル建て資産に圧力をかけるなか、より多くの米国運用会社が資本基盤を強化するために米国外へ目を向けるとみている。
別の米国人弁護士は、「米国と英国は、同じ言語を話し、規制や資本市場も似通った非常に重要なグローバル市場だ。したがって、その種の組み合わせは今後も続いていくと思う」と述べた。
オルタナティブ資産やプライベートキャピタルへのシフトは、ファンドマネージャーがより高い利益率を求め、主要な公開株式市場が引き続き縮小する中で、さらに加速する可能性が高い。
この2人目の弁護士は次のように述べた。
「オルタナティブには、より高い利益率、運用資産1ドル当たりのより大きな収益という利点があると言える。」
「それによって、さらなる成長の原資を生み、新たな事業を買収していく世界において、オルタナティブ運用会社は大きな優位性を持つことになるだろう。」
今週もご自愛ください