王はいつ復活するのか

2021年1月7日付FT紙 ”Winton left nursing huge losses after wild year in markets”より

市場と長く対峙していれば多かれ少なかれ変動を繰り返すと頭でわかっているものの、かつての王様が苦しむ姿を目の当たりにするのは外野であってもつらいものです。

本日の話題はヘッジファンドの雄、Winton Groupの話題。

かつては世界でもっとも成功したヘッジファンドのひとつに数えられていた同社ですが、運用の不振も重なり預かり残高をなんと8割も減らしています。1997年に設立されていますが、創業者Harding氏は同社を設立する前に共同創業していたAHL社で大成功を収めています。

私の記憶ではAHLは世界最大のヘッジファンドManに買収されており、改めて独立の道を選びHarding氏はWinton Groupを設立したという流れ。1997年と言えば私の社会人生活スタートの年(すいません、どうでもいいですね)、日本では山一証券の廃業など金融危機の真っ只中でありました。

巨額の不良債権が存在すると指摘され(デビット・アトキンソンさんが銀行アナリストとして活躍されている時代です。彼が声高に不良債権の存在を主張したことで随分と世間から批判され、苦しい思いをされていた頃)、日本が長い不良債権処理の道を歩みだす時代でもありました。

その中で燦然と輝いていたのがトレンド・フォローと呼ばれる、短期的な市場の動きをモデル化し、コンピューターの演算能力を活かしてトレンドを予測、同じ方向にポジションを構築するクオンツ型の投資でした。重苦しい日本の金融界を尻目に、コンピューターを駆使した次世代の投資スタイルとして前向きなオーラ全開で、まぶしすぎる存在でした。浪人生が東大文一のリア充を眺める気持ち、とでもいいましょうか(全然ちがいますね笑)。

私の娘たちに言葉で伝えることもままならないのですが、Windows95で初めてGUIという目で見て直感的な操作ができる!というコンピューターが身近になった時代。限定的ではあったと思いますが、今で言うビッグデータを取り込み、市場のモメンタム(方向性)を解析するという投資手法。なんでそのポジションを張るのか、人間の知覚では説明できない世界がその頃から存在した訳です。

やや話が外れてしまいましたが、そのヘッジファンドの王様Wintonが資産規模$33.7Bn(2015年)から$7.3Bnまで減らしている。その旗艦ファンドは昨年マイナス20.5%のリターン。昨年はすべてが裏目にでた、とHarding氏。一体何が起こっているのか。

FTによればコロナ禍の市場変動でヘッジファンド業界での優劣が鮮明になり、過去の市場データに基づいて意思決定を行う市場トレンド系のファンドは苦戦、とあります。リーマンショックの年、2008年でさえ旗艦ファンドはプラス21%だったヘッジファンドの王様。また自信に満ち溢れた王の帰還をお待ちしております。

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