オルタナティブの総合力 -Carlyleの進化-

資金調達コストの上昇に加えて、地政学上の問題、そしてグロースのバリュエーション低下などを理由にファンドレイズ進捗のバラツキがPE運営会社の業績に影響を与えていますが、本日の話題は大手一角のCarlyleさんの話題。もはやPEだけの会社にあらず、という事でしょうか。

これまでのチープ・クレジットの時代を乗り越え、”エクスペンシブ・クレジット”の時代を見越した同社の動きをご紹介します。


FT記事:Carlyle’s credit business overtakes private equity for first time in 35 yearsより

ディールメーキングのパイオニアであるカーライル・グループは、35年の歴史の中で初めて、クレジット投資事業の手数料収入資産がプライベート・エクイティ事業を上回った。

ニューヨークとワシントンを拠点とするカーライル・グループは、木曜日の朝に発表した第2四半期決算において、クレジット投資の手数料収入資産が1160億ドルであるのに対し、プライベート・エクイティ部門の資産は1060億ドルとなったと発表。

1987年に設立されたカーライルは、コーヒーチェーンのダンキン・ドーナツの買収や、昨年のメドライン・インダストリーズの買収など、ウォール街で最も注目を集めたバイアウトを手がけてきたが、この変化は、プライベート投資業界がいかに変化しつつあるかを物語っている。

ブラックストーン・グループやアポロ・グローバルといった他の上場代替資産運用会社と同様、そのバイアウトビジネスはかつてほど支配的ではなくなってきている。カーライルのCEOであるKewsong Lee氏は、Financial Times紙に対し、「当社の運用報酬資産のうち、最も大きな割合を占めるのは、現在ではグローバル・クレジット関連である」と述べているのだ。

リーは2020年に資産総額3760億ドルのグループの単独トップに就任して以来、カーライルの事業を拡大する戦略に着手している。「ほんの数年前とは全く異なる会社になっている」と彼は述べている。「我々は意図的に事業の多角化を進めてきた」とも。

カーライルの決算では、アナリストがキャッシュフロー全体の代理指標として用いる分配可能利益も、前年同期比36%増の5億2900万ドルとなり、1株当たり1.17ドルに相当する利益を計上した。これはアナリストの予測を上回っている。

カーライル内部のシフトは、2つの要因から生じている。クレジット事業は買収を進め、カーライルで最も急成長している部門となり、年末には総資産で最大の事業となる勢いであること。一方、伝統的なプライベート・エクイティ戦略の資金調達は、今年市場が下落し始めて以来、減速している。

クレジット事業では、全体の運用資産は前期比57%増の1,430億ドルを記録した。4月1日には、カーライルが再保険会社フォーティテュードとの取引を完了し、480億ドルの新規フィー収入を得たほか、資産150億ドルの有担保ローン・マネージャーであるCBAMを8億ドルで買収している。一方、カーライルのグローバル・プライベート・エクイティ事業の運用資産は、41億ドルの資金流入が63億ドルの資産売却を上回り、1%減の1670億ドルとなった。

カーライルは、多くの競合他社と同様、ロシアのウクライナ侵攻で金融市場が打撃を受けて以来、大型買収のための新規資金調達に苦慮している。昨年秋に資金調達を開始した8番目の旗艦バイアウトファンドは、当四半期に22億ドルの資金調達にとどまった。投資家のコミットメント総額は135億ドルで、昨年ブルームバーグが発表した目標額270億ドルを大きく下回っている。

第4四半期の資金調達額は98億ドルにとどまったものの、カーライルは2024年末までに1300億ドルの新規投資家資金を調達するというリー氏の目標の半分をクリアしたことになる。同氏は、カーライルが目標を達成することに引き続き自信を持っている。

カーライルの投資パフォーマンスは好調で、すべてのプライベート・エクイティ・ファンドが上昇するか損失を免れた。コーポレート・バイアウト・ファンドは前四半期から横ばいだったが、それに対してBlackstoneは6.7%の落ち込みを記録している。

Carlyleは炭化水素系資産の売却を見送ったことが功を奏しました。天然資源ファンドは、原油と天然ガスの価格上昇に支えられ、14%上昇しました。このような投資の未収収益は427%増の7億3900万ドルに達している。カーライルがバランスシートで保有するパフォーマンス収入全体は、43億ドルに達し、新記録を達成。Carlyle の株主に帰属する純利益は2億4500万ドルで、Blackstone の2900万ドルの損失と比較すると、その差は歴然だ。Leeは、バイアウトのための資金調達が減速していることを一蹴し、投資家が他の戦略への配分を増やしていることにも触れている。

Lee氏曰く、「プライベート・エクイティ投資家の資金調達が難航していることはよく知られています。しかし、それはもう古い話なのです」「プライベート・クレジット、インフラ、投資ソリューションに対する需要は非常に高いと見ています」。


熱い日が続きますが、どうぞ皆様ご自愛ください。

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