森林投資:環境と投資を両立する

2021年3月23日付けFTコラムLEXより Tree planting: everything but the carbon sink

脱炭素化の文字を見かける日々が続く

今朝の日経一面もこの話題。もはや世界共通の話題となった環境対策、脱炭素化の流れではありますが、FTの名物コラムLEXに本日は注目します。森林を活用した二酸化炭素の削減に関する話題です。

機関投資家のオルタナティブ投資テーマとして”Timberland Investment” 森林投資は以前からよく聞く投資テーマでありました。しかしながら、本邦機関投資家の関心は今ひとつであったという印象です。周囲に聞いてみると”前に聞いたよねー”という声は聞こえますが、実際に取り組んだ例はあまり聞こえてきません。

その森林投資ですが、調べてみますと既に100年以上の歴史がある投資分野なのですね。NCREIFが発表する森林投資指数が1987年から発表されており、なかなかのパフォーマンスを見せています。S&P500と同じくらいのリターンで半分の変動性というイメージ。いいじゃないですか。

面白いのは森林投資と農地投資を組み合わせた50:50ポートフォリオのパフォーマンス。ネット検索で見つけた某社の報告書を見ると非常に底堅いリターンを見せるんですね。組み合わせとしてよし。

脱炭素化のテーマで再注目

そんな森林投資ですが、二酸化炭素を吸収するという今更ではありますが”当たり前”の特質が注目され、投資と環境保護を同時成立させるという事で注目を集めているようです。

FTの記事によりますと、二酸化炭素を吸着する性質を利用して生み出される”カーボン・クレジット”ですが、森林そのものが生み出すクレジットは1−5ギガトンのCO2削減効果が”潜在的に”存在するそうです。

これは2030年の推計でして、森林そのものが生み出すクレジットの総量は8−12ギガトンありますが、カウントが難しい森林も含まれるので結果的には1−5ギガトンが市場で”取引されうる”クレジットの総量になるというロジック。

面白いのは資源によって単価が異なることでしょうか。CO2を1トン削減できるクレジット=tCO2eと表示しますが、森林を通じて生み出される1単位のtCO2eは$4.3mmと一番高いんです。再生エネルギーは生み出すクレジットは多いものの単価は安く$1.4mmで評価されているそう。

結果的には取引されるフローの金額として一番多いのが森林・土地活用で年間$160mmの市場規模となっています。

Totalの動きに刺激された

そんな中で、先週水曜日に話題となったのが石油メジャーの一角、Totalの動き。採掘地を持つコンゴ共和国にて4万エーカーの植林投資を行い、CO2の削減に乗り出しました。以前もブログで取り上げたPatrick Pouyanneさんが率いるエネルギー会社です。

年間$100mmを脱カーボンに投資する、と表明していたイニシアチブの一貫と見られていますが、CEOパトリックさんが言うには”再緑化=Reforestationが余剰CO2を吸収するに最も合理的だ”、とのこと。植林にふさわしい土地は限られると言われますが、単なる投資だけでなくESGに沿った事業ニーズとして森林投資を行う動きが顕在化しております。

1ヘクタールあたりに吸収できる二酸化炭素は6トンと試算されていますので、ヨーロッパ全体で植林のみをもってカーボン・ニュートラルを目指すには500万ヘクタール=地表の約半数が必要ということになってしまい達成不可能。単体での効力は限られますが、今後も植林あるいは開拓から保護するという形で森林投資が活発化する動きが予想されます。

一方、我が国では私有林の所有者および境界がはっきりしておらず、会計制度の問題もあってファンド化、投資対象としては難しいというDBJさんのレポートも拝読しました。しかしながらこの森林投資は古くて新しいテーマとして脚光を浴びて行く流れがはっきりと見えた次第です。

本日も良い一日を。

関連ブログ