次の大きな飛躍に向けて -BREITの今-

FT記事:Blackstone’s Breit unloads property to finance push into AI data centresより

コロナ禍、そして金利上昇期を経て不安視される世界的な商業不動産市場ですが、そこで存在感を示しているのが皆さんご存知、Blackstone社が運用する私募不動産投資ファンド、通称BREITです。

単体で680億ドルの運用総額と言いますから、9兆円規模にまで成長した同社の看板ファンド、まちがいなく世界有数の大型不動産ファンドであります。そこに投資家からの大きな償還要請があり、一時的にゲートを発動したのが記憶に新しくありますが、いまどうなっているのか。

結論から申し上げますと、次の上昇期に備えてグッと力を込めている状況になってます。

確かに手元の流動性を高めるべく大きな物件売却を進めていますが、大きなジャンプを果たす前に一度重心を落とすアスリートのような・・。そのBREITが狙うのはデジタル・インフラとなります。この読みがどうでるか。答え合わせは3年後ぐらい?でしょうか。


以下記事より抜粋

Blackstone の680億ドルの旗艦不動産ファンドは今では世界有数の不動産の買い手から大口の売り手になっているものの、償還に対応するため流動性を高めつつ、人工知能ブームに対応するためデータセンターに数十億ドルを投資を行なっている。

Financial Times が Blackstone の有価証券報告書を分析したところ、2021年初頭から昨年第3四半期までに、Blackstone Real Estate Income Trust (Breit) はホテルや倉庫、セルフストレージなど、およそ600億ドルの不動産を取得したことが判明した。この取引の波には、4つの上場不動産投資信託の非公開化も含まれている。しかし昨年秋以降、Breit は大規模な購入は行わず、代わりに100億ドル以上の資産を売却し、成功した投資の利益を確定させ、流動性を高めている。

この売却は、同社の貸借対照表に計上されている不動産の価値を4%上回るもので、約25億ドルの投資利益を生み出した。昨年11月、投資家から現金引き上げの要請が相次ぐ中、ファンドが引き出しを制限して以来、実にBREITは80億ドル以上を投資家に分配してきたのである。

昨年末、BREITはラスベガスの2つのカジノの株式49%を28億ドルで売却するなど、大規模な資産売却が行われたことで、急増する償還請求に対応するための流動性が生まれた。「約100億ドルの当面の流動性があるため、Breit は財務面で大きな柔軟性を確保した」と、Blackstone は FT に声明を発表しました。先月、投資家が Breit に求めた償還額は38億ドルで、1月から30%減少している。

テキサス州のリゾート施設の8億ドルの売却や、今月初めに発表されたセルフストレージ・ポートフォリオの22億ドルの売却など、ここ数カ月の売却は、Blackstone が人工知能のブームによるコンピューティング需要の高まりに対応する施設を建設する「一世一代の」チャンスと考え、その準備のために資金を調達していることもある。この件に詳しい2人の情報筋によると、Blackstone は80億ドル以上を投じて、複数の大規模テクノロジー企業向けに新たなデータセンターを建設することを確約している。

この投資は、データセンターに特化した不動産信託である QTS Realty Trust を所有する Blackstone が、2021年半ばに100億ドル以上で取得したものに端を発する。AI 投資の急増によるデータニーズの高まりに対応するため、10億ドルの資産規模を持つグループ全体で、データセンターへの投資を優先しているのだ。独立系調査会社の Dell’Oro Group によると、Microsoft、Google、Meta、Amazon といった大手テクノロジー企業は、人工知能技術によるコンピューティング需要の急増に対応するデジタルインフラを構築するため、今後数年間で約1兆ドルを投資する必要があるという

この件に詳しい2人の情報筋によると、Blackstone は近年、米国内の5つの州に新しいデータセンターを建設するため、10億ドル以上を投じて土地を購入しており、建設予定の施設で必要となる大量のエネルギーを処理するため、地元の大手電力会社と電力契約を結んでいるという。Blackstone が建設を準備しているデータセンターは、プロジェクトの規模や複雑さを考慮すると、1件あたり10億ドル以上かかる可能性があると、情報筋は述べています。

 実はQTS への投資は、富裕層投資家を対象とした不動産ファンド Breit と、大規模機関投資家を対象とした同様のファンド、インフラファンドに分割されて投資されている。そして QTS を買収して以来、同社の賃貸面積は3倍に拡大し、新たな投資でさらに規模を倍増させる準備を進めている。この件に詳しい情報筋によると、QTS の評価額は約200億ドルと急騰しており、Blackstone が支払った額の2倍に達した。

Blackstone の一部の幹部は、この投資が同社にとって最も収益性の高い不動産投資になると考えています。「大手テクノロジー企業は AI 軍拡競争の真っただ中にあり、データセンターにおける将来の成長のための”Once-in-a generation” 一世一代の牽引力になると私たちは信じており、現地では多大な需要を集めている」と、Breit は最近投資家たちに語っている。

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