久しぶりのレブロン判決 -揺れる経営者と投資会社の綱引き-

FT記事:Delaware decision shows how private equity preys on vulnerable CEOsより

PE会社にとって割安な案件ソーシングがどのように行われているか。私にとっては久々に目にしたレブロン・ルール発動の判例を目にしながら、アートとも言える企業オーナーとPE会社の駆け引きを垣間見ることが出来ました。ポッドキャストでもあんまり不用意な事は言えないなぁ、と自戒も込めて(笑)共有します。


リック・ストルマイヤーは、カリフォルニアのガレージでソフトウェア会社を立ち上げ、2015年に10億ドルに迫る評価額で株式を公開することで夢を実現した。ただし、その後に起こった多くは、元米海軍の潜水艦将校にとって悪夢でしかない。起業家向けポッドキャストのゲストとして、彼は株式を売却することを容認しない会社の株主を嘆き、許された定期的な売却を「非常に小さなストローで吸う」ことと同等だと表現していた。
 
ジムやフィットネス・スタジオのシステムを稼働させるストルマイヤーのソフトウェア事業「Mindbody」は、2018年のクリスマス直前に、Vista Equity Partnersへの身売りを発表した。この取引により、ストールマイヤーは多額の現金を手にいれると同時に、仕事を続けながら非公開化された会社の株式を手に入れることができた。
 
しかし先月、デラウェア州の裁判官は、ストルマイヤーが自分の(換金したいという)流動性ニーズを優先し、レバレッジド・バイアウトであまりにも低い価格で売却したため、他のマインドボディ社の株主に対する受託者責任に違反したと裁定を下したのだ
 
デラウェア州裁判所主席判事Kathaleen McCormickの判決によると「StollmeyerはMindbodyの株価を戦略的に下げ、デュー・ディリジェンスと入札募集期間中にVistaに情報とタイミングの優位性を提供し、売却プロセスを優位に動かした」とのこと。
 
マコーミック判事はマインドボディの株主に対し、1株あたり36.50ドルの取引で1ドルの基本損害賠償を認め、ストールマイヤーとVista(Vistaは別の不正行為で責任を負うとされた)が約4000万ドルを支払うこととした。
 
マコーミック判決は、プライベート・エクイティ・ファームがいかにして最高経営責任者の気持ちを逆手に取ることで自らの利益を得ることができるかを示す詳細な事例と言える。
 
マインドボディの株主であるヘッジファンドのルクソール・キャピタルは、ビスタとの取引が発表された後、ストールマイヤーを含むマインドボディの取締役会が、会社の売却を求めたら全株主にとって可能な限り最高の価格を求めるという、いわゆるレブロン義務に違反したとして訴訟を起こしていた。
 
Luxorは同社が株式公開を維持していた方が価値を最大化できたと考えている。判事はストールマイヤーが流動性を求めて必死になっていたことを示す証拠に納得しており、ポッドキャストの収録で、株の売却を制限されていることを訴えただけでなく、ストルマイヤーは家族からお金を求められ、大学に数百万ドルの誓約をし、銀行のクレジットラインから現金を引き出していた。
 
2018年夏、ブティック投資銀行である「カタリスト・パートナーズ」のバンカーは、ストールマイヤーがすぐに買い手として切望することになるソフトウェア専門企業のVistaを彼に紹介している。この投資家会社は同年末に開催された投資先企業の年次大会「CXO」に彼を招待している。そこで彼は、億万長者の創業者であるロバート・スミスや、もう一人の重鎮であるブライアン・シェスなど、ビスタの幹部たちに次々と会った。そのCXOを通じてVistaがマルケトという会社を20億ドルで買収し、それを50億ドルで売却したことを知ったのだ。
 
カタリストがクライアントを抑えようとしたこともあったが、この投資銀行の行動はデラウェア州の裁判所の非難を浴びることにもなった。ストルマイヤーがVistaに忠誠を誓っていた頃、マインドボディのバンカーは、VIstaがオークションで勝利するために水面下でサポートをしていた。証拠によると、このアドバイザーは、Vista社に価格予想を密告し、取引プロセスの微妙な利点を提供していたという。
 
マインドボディの取締役たちからの監視や、競売の際に守るべき規範についてのアドバイスも有効だっただろう。当時、証券取引所に提出された資料によると、ストルマイヤーは取引価格に基づいて6,000万ドルの自社株を保有していたが、この資金は、彼がかつて不快に感じたマインドボディの一般株主のもとにすぐに戻ってくるかもしれない。


それでは今週もご自愛ください。

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