すでに報道でもありますが、野村證券さんで販売が始まったBlackstoneさんが運用するBXPE。個人向けのPEファンドであります。私の手元にも商品案内が届きましたが、これは!と唸らせるさすがの出来栄え。
それは見栄えの良いプレゼンでなく、流動制の作り出し方に大手ならではのテクニックを感じ取ったからであります。そして目論見書を読んでおりますと、なんと本商品は野村さんだけでなく、他の国内大手証券(複数)が販売を3月1日、そして4月1日と順次取り扱いを開始するそう。これには驚きました。すごい営業力(笑)
そもそもNAVに対して運用報酬が適用されるBXPEは、クローズド・エンド型のファンドでよくある「当初コミットメント、以後投資残高」形式に比べてもアップサイドが大きく、運用会社にとっても相当な収益貢献が期待できますし、そして個人にとってもオルタナティブ投資につきものだった「長期資金拘束」から解放される。
クローズド・エンド型投資にとって実は「相続イベント」がネックだったので、個人は入りづらかった(加えて税制も)部分が、この”準流動性”ビークルを通じて懸念が解消されるのではないでしょうか。
長くオルタナ業界に携わってきた私でも魅力に感じる、こちらの商品に対してさすがFT。名物LEXコラムで面白い記事を書いてくれています。これは要注目!
FT記事LEXコラム:Private Equity: struggling to work for the little guyより
多額の資金を集めるには2つの方法がある。まずひとつ目は限られた数の大口の小切手を追い求めることであり、もうひとつは、少額の小切手を数多く狙うことである。これまでプライベート・エクイティは前者の道を歩んできた。そして今は後者の道、つまりは個人投資家を対象とする資金調達の道を歩もうとしている。
最近の取組みとしては、semi-liquid、つまりは準流動性バイアウト・ファンドが注目される。このファンドはプライベート・エクイティの本流である、企業グループを買収し、負債を負わせ、再生させるという手法を、より小規模な投資家にも提供することを目的とするものだ。
最近でも少なくとも3つのファンドがローンチされている。1月に13億ドルで運用を開始したBlackstoneのBXPEは、KKRのK-PrimeやApolloのAAAが挙げられる。これらは資金の一部もしくは大部分をバイアウト戦略に投資するものだ。
PitchBookのティム・クラークによれば、これらのファンドは2023年に合計で約50億ドルを集めている。また投資銀行家のロバート・スタンガーによれば、これは昨年業界がリテール向けファンドに集めた730億ドルのごく一部だという。最低投資金額が25,000ドルという少額で投資家をターゲットにするのは、まだ始まったばかりの戦略だが、業界はその成長を期待している。
プライベート・エクイティ・スタイルのバイアウトを小口投資家に提供することには魅力がある。それは新たな資金源となることだ。プレキンによれば、2023年10月現在、4,000のファンドが120億ドルの資金を求めて動いているおり、機関投資家、特に米国では、このアセットクラスに対してすでに基準より多めの配分を行っている。(訳者注:つまりは機関投資家のファンドレイズに苦戦中)
富裕層やファミリー・オフィスなどの投資家にとっては、歴史的に市場をアウトパフォームしてきた戦略へのアクセスをより手軽に提供する。考えてみれば個人投資家にとって、10年間資金を拘束されるのはさすがに躊躇するだろう。そこでこれらのファンドは少しだけ流動性を提供しながら、適切なバイアウト案件を提供しつつ、投資を開始したその日からリテール向けビークルに対して”全額投資”できるようにした。
流動性の作り出し方は戦略によって様々だ。例えばBlackstoneは、BPXEビークルに新規ディールにファンドの少額を分散投資しており(訳者注:流動性の高いバンクローン・ファンドなども組み合わせて)数多くの分散投資を通じて流動性を作り出している。
一方、KKR は自社のバランスシートを活用しながら、BS保有案件の一部をK-Prime に機動的に移すことで流動性を解決しようとしている。これはファンドが様々な年代の案件にアクセスできることにもなり、出口をずらす意味でも賢い方法である(ただ、資産を移動させることはコンフリクトの可能性を生むが)。
このように、小口投資家の嗜好に合わせて流動性を作り出すための知恵が絞られている戦略と努力には一考の余地がある。
毎日天気がコロコロ変わります。どうか皆様ご自愛ください。