参照FT記事:
Trend breaker Blackstone braves frigid debt market with Emerson climate tech unit stake
Lex: Blackstone/Emerson: vendor lenderより
週末になると溜めていた新聞記事を眺めながら本コラムのネタ探しをする、というのがルーティーンになりつつある私ですが、渋みのある記事を見つけるとついニッコリしてしまう危ない癖が身につきあります。
本日の話題もFT掲載記事でありますが、BlackstoneのEmersonに対する買収記事に”渋み”を見つけましたので共有させて頂きます。今や親会社となった日経新聞もこの辺りの記事まで触れてくれると本邦資本市場の厚みも増していくのでは?と考えさせられる記事でもあります。
まずはディールの概況から。PE大手のBlackstoneがADIAやGICと組んで総合家電メーカーのEmersonの環境・空調部門を140億ドルで買収することに合意しています。Emersonが非中核サービスと考える同分野のカーブアウト案件という事になりますが、事業の55%をコンソーシアムで保有することになります。
1890年創業というEmersonですが、冷蔵製品・部品や空調設備、そして照明管理などを大規模小売店向けに提供するビジネスをコンソーシアムに売却し、中核業務と考える自動化分野への投資原資を確保するというのが背景。約18ヶ月をかけて買い手を探してきました。
そして今回の注目は資金調達手法です。Emerson側は売却で95億ドル相当のキャッシュを買い手コンソーシアムから受け取ることになっていますが、コンソーシアムは44億ドルを支払い、残りは負債調達となります。
そこで鋭い皆様は「こんなマーケットでDebtは誰から調達するのか?」という疑問をお持ちになろうかと思います。Citrixの件を始め銀行団がLBOローンのマークダウンで手痛い損失を抱え中で、コストの高いDLレンダーにいくのか?と思考もされるかと思います。
もちろんGSやSixth StreetなどのDLレンダーから負債調達するのですが、今回耳目を集めたのがEmerson自身が提供する22.5億ドルの”seller financing”という存在。伝統的な資金調達が厳しい中で、Blackstoneが見出した活路が「売り手からお金を借りる」という発想。
期間は約10年と報道されていますが、Emerson側には早期返済請求権など有利な条件がついているそうですが、ローンの足らずまいをベンダーファイナンスで埋めるという解決策を見つけてきました。
PE部門のヘッドであるJoe Baretta氏のコメントを抜粋します。
This is a marquee transaction for our private equity business and a testament to our ability to deliver solutions to our partners even in difficult economic and market environment.
Joe Barretta, Blackstone
人間・経済はすべて環境に従属する存在であることは間違いないでしょう。だけども、少しでもそれを突破しようとする創意工夫をすることでフロンティアを押し広げていく。この気概がビシビシ伝わってくる渋い記事でありました。
それでは今週もご自愛ください。