投資戦略

Brookfieldの研究 Part4

第4回 CFOになった気分でBrookfieldの資金調達を眺めてみる

第一回目はその生い立ちを、そして第二回目では会社としての特徴をキーワード5つで表現し、直近第三回目では財務を俯瞰してきました。

シリーズ四回目の今回は、ブルックフィールドの資金調達構造を考えてみたいと思います。特に負債調達に焦点をあてますので、CFOにでもなった気分でこの会社を眺めていきましょう。

いつものように情報ソースは10-Kを始めとする開示資料に依拠しておりますが、正確性は保証できない旨をご了承ください。それでは始めます。

Writer in Chief: Takashi Miura

負債構造を観察する

バランスシートがとっても大きい!というのがブルックフィールドの特徴でした。

その中身をみるときに欠かせないのが負債です。巨大なインフラ資産や不動産を所有する中でどのようなファンディングを行っているのか、その負債構造を眺めてみたいと思います。

調達エンティティは2つ、手法は3つ

企業構造のおさらい

まずは同社の企業構造を思い出してみます。

Brookfieldの組織図

親会社BAMの下に上場子会社が4つ存在し、その下位にファンドが位置しています。

そこで資金調達を考えるにあたり、まずは親会社BAMから始めます。

ご注意頂きたいのは、資産紐付けの資金調達(つまりノン・リコースローン)が全体の9割を占めている点です。これから親会社・子会社・ノンリコースの借入として3つの負債調達を眺めて行きますが、親会社・子会社で調達される負債はそもそも大きくない、という点を予め頭に入れておいて頂けると助かります。

そして、もう一つご注意を。詳しい方であれば説明をする必要もないとは思いますが、ノン・リコースローンによる資金調達では、万一返済不能に陥った場合でも返済義務は投資資産の処分価値にとどまりますので、運用会社には遡及されず、会社としては損失を限定できるローンであることを申し添えておきます。

パターン1:コーポレートの借入として親会社で調達

親会社での借入残高推移

親会社での借入残高推移

まずは会社自体の与信に基づくローン、コーポレート・ローンで親会社が借りるパターンに注目します。相対的には親会社による借入は少ないといいつつ、さすがの$7Bn超え。やっぱり大企業ですね。

平均的な借入期間も10年と長く、リボルビングファシリティの契約期間は4年あります。なお、平均的な金利は4.6%程度で安定している模様。

パターン2:コーポレートの借入として子会社で調達

子会社ごとの借入

子会社毎の借入推移

次に子会社レベルでのコーポレート借入を見てみます。セグメント毎にバラつきがありますが、全体としては約$8Bnと親会社の借入とそれ程大きく変わらないですね。

平均的な借入期間は、再生可能エネルギーやインフラが長く、不動産やプライベートエクイティが2~4年と短いようです。全体としては4-6年と親会社に比べると短くなっている点が面白いですね。なお、平均借入金利は平均で4-4.5%なので、ここは親会社とほぼ同一レベル。

パターン3:ノン・リコースローンとして投資資産に紐付けして調達

ここからが本日のハイライトです。

ノン・リコースローン推移

ノン・リコースローンの推移

積み上がりにご注目。

先ほどから親会社・子会社と負債残高をみてきましたが、それぞれ総額$7-8Blnレベルでした。ところが投資対象と紐付けされるノン・リコースローンの残高の伸びがすごい。2019年で$120Bnを超えてるんです。

割合として大きいのが不動産ですが、最近の成長を牽引しているのが再生可能エネルギーインフラですね。このアセット・クラス単体では収益性が低いので、投資家の期待する利回りを満たす為に負債比率が多めになります。また2019年のオークツリー買収に伴いプライベートエクイティの借り入れも急増中。

不動産、住宅開発の借入期間が短い反面、再生可能エネルギーやインフラは借入期間が長く、平均的な借入期間は5-6年で推移中。

調達金利

さて、そのノン・リコースの金利水準も一応眺めておきますと、平均的には4.8-5%と会社借り入れから比べると少しだけ割高です。ただし、足元の再生可能エネルギー、住宅開発の調達金利が低下し、全体としては調達金利は減少傾向にあります。

ノンリコースローンの調達金利

ノン・リコースローンの調達金利

 

変動金利での調達を増やしている

面白いのは不動産・インフラという安定事業資産・収益に対して、変動金利の比率を増やしている点です。ここにALM上のギャップが存在するとすれば、どのようにマネージしていくのか。巨大な分だけCFOの手腕が問われるところ。

固定・変動比率

固定・変動金利の比率

格付会社の見方

視点を変えて、格付会社からみたBAMの債務評価=信用格付けがこちらです。

方向性(Outlook)も安定的です。インフラファンドは巨額の長期資金を調達する必要がありますが、コーポレートの借入であっても安定調達できそうですね。

信用格付け

2020年3月時点の信用格付

あらためて実感

今回は負債構造を眺めてきましたが、ノン・リコースローンの推移グラフを眺めているだけでも味わい深い。

過去5年くらいの間に同社は

不動産主体の”一本足打法”から、”オルタナ総合”投資会社に変貌している

改めてそう思う訳です。これまで同社をインフラ投資会社と思っていたのですが、それは間違っていました。

前回の特集で観察してきたブラックストーンとは違うスタイルではありますが、やはり独自の戦略で事業分散を進めている。これこそが運用会社の”経営力”と言えるのかもしれません。

ということで次回以降のお知らせ

今回第四回目は負債構造を眺めてきました。

次回第五回では投資セグメントごとの長所・短所を考えます。

そして最終回第六回ではライバルAMPとマッコーリーとの比較をしてみようと思います。

それではよい1日を。

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