2020年の通信簿 ヘッジファンドの運用成績

2021年1月25日FT記事 Managers of leading hedge funds make record gains より

2020年のヘッジファンド業界

今日のFT記事も味わい深い。ヘッジファンド上位20社が昨年稼ぎ出した利益の総額は$63.5Bn。約6兆5000億円という絶対額を教えてくれました。普通はリターン=%表示で、トップパフォーマーの凄さを感じる訳ですが、6兆円以上も顧客に利益をもたらした、という観点がとても面白い。

記事によりますと、Tiger GlobalMillennium Managementを筆頭とした上位20社でありますが、ヘッジファンド業界で稼ぎ出した利益の半分をその20社が叩き出しているとのこと。すごい偏りですね。

つまりは優勝劣敗が鮮明になった年だったと言えるのでしょうが、「それっていつものことでしょう?」とのご指摘もよく分かります。ところが2019年だと上位20社の稼ぎは全体の約3分の1でありました。

リターンを情報を記事に提供しているFOF大手、LCH Investmentsによると「(上位パフォーマーは)各セクターにおける優位社、劣後社の分析で圧倒的に差をつけている」とコメント。単に3月の底値でポジションを仕込むだけでなく、やはり個別企業の分析力、将来への読みが優れていたということでしょう。

しかし面白いのはそれだけではありません。

人間がコンピューターに勝利した2020年

AIやHFTなどのテクノロジーが全盛ではあると思いますが、結局3月の底値で気合を入れてお金を投じてきた、人間マネージャーが2020年の成績ではコンピューター主導の戦略を上回った

HF界の巨匠ジュリアン・ロバートソン氏が設立したファンドから暖簾分けした、別名Tigar cubと評されるファンドの一つ、Tigar Globalが今年のトップパフォーマーで利益だけで$10.4Bn、1兆円以上を稼ぎ出している。僅差でAUM$46.7Bnまで伸ばしてきたMillenniumが$10.2Bnの利益と続く。

対して、これまで優れたパフォーマンスを叩き出していたコンピューター/アルゴリズムを駆使するRay Dalio氏のBridgewaterJim Simons氏のRenaissanceは苦戦中。旗艦ファンドが揃ってマイナスに落ち込んでいる。

人間がいいのか、それともやっぱりコンピューターなのか

先のブログでは市場は効率的じゃない、とする見方を紹介しました。大きなストレスが市場にかかった時、胆力を発揮できるのが人間マネージャーなのでしょうか。

ともすれば蛮勇かもしれないのですが、市場の変動性が高まる局面でリスクを減らしにいくのか、それとも取りに行くのか。反発局面をどう想定するかが昨年の分水嶺でありました。

人間に任せるのか。それとも感情を排したコンピューターなのか。今年もやはり議論が続きそうです。

それでは本日もよい一日を。

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