テクノロジーの足音:進む債券取引の電子化

2021年2月22日付けFTより Bond trading is finally dragged into digital age

ようやく債券取引も電子化が進んできた

株式市場に比べて大きく出遅れていた債券市場の電子化ですが、コロナ禍の影響もあり、ようやく進んできております。まだまだ道半ばではありますが、いよいよ株式市場で起こった変化が、債券トレーディングフロアにも静かに広がってきました

マジックナンバーは”246”

世界中には約41,000の株式が上場されているそうですが、債券においては数百万の種類があると言われています。その全てが独自の条件・個性を持ち、統一化が難しかった。

米国市場だけとっても2018年に市場で残高があった債券は21,175銘柄もある。ところが日に一度以上の取引が成立する債券はたった246銘柄しかないんです。殆どがたまにしか取引がなく、全体の6分の1は年間を通じて全く取引がされていないそうです。

GFC後の規制強化で投資銀行が在庫を保有しづらくなったこともあり、なるべくインベントリーを持たずにマーケット・メイクする必要性に迫られてきている中で、ETFが流行し、複数銘柄をまとめてアルゴ取引する機会・需要も増えてきた。そこでインフラが強化され電子化が進んできました。

2つの電子プラットフォーム

シェアを獲得している電子プラットフォームはMarket AxessTradewebの2強。それぞれ取引量は2017年から倍増、3倍増と絶好調。米国の投資適格債が38%、非適格債においては26%が電子取引で行われています。

JPモルガンの調査によると、2022年までに社債取引の4割が電子化され、国債においては3分の2が電子化される意見が大勢とのこと。

面白いのは取引量が多い銘柄ほど、電子化が進むという傾向です。それが更なる市場参加者を呼び込み、取引量も増える。人気あるナイトクラブほど設備投資が増え、さらにお店が目立ち、顧客を呼び込むという循環と似ている、と記事では説明されております。

債券市場はロングテール化が進む

逆にいうと人気のない銘柄ほど電子プラットフォームにのせられず、さらに投資家から敬遠される傾向に。つまりは債券市場の電子化というキーワードにおいては取引量においてロングテール化が進展していくことが予想されます。

電子プラットフォームに乗って、頻繁かつ大量に売買される少数人気銘柄と、乗り遅れた大多数の不人気な債券たち。ここでは稀にしか取引が起こらない。

ここでも格差社会、あるいはデジタル・ディバイドという減少が見られると言えましょう。そもそも金融というデジタル社会の中であっても、そういった格差が生じてくる。受話器を取り上げ、トレーダー越しに人気のない債券も取引してあげたいな、判官びいき自分にはそんな感情がこみ上げてくる話題です。

本日もよい一日を。

関連ブログ