新しい人材ニーズここにあり -オルタナティブ投資を通じた富裕層戦略-

新年明けましておめでとうございます。久しぶり実家熊本に帰省してゆっくりして参りました。そんな中で新年一発目の記事として取り上げるのは金融マンとしてのキャリアの話。

ファンドレイズについては機関投資家を押さえつつ、いかに富裕層向けビジネスを拡大していくかというのが大手運用機関トップの思考回路となっているなかで、その人材が足りてないという話題でもあります。

これについては自分/当社なりのソリューションがございますが、金融に携わる人間として今後のキャリアを考える上でも重要な示唆になるのでは?と考える次第です。


FT記事:Asset managers hunt for talent able to sell complex ‘alternative’ investments to the wealthyより

大手資産運用会社は、投資信託から富裕層向けのオルタナテ ィブ商品への移行に伴い、より複雑な新しい投資商品を販売する人材の確保にしのぎを削っている。特にクレジット、プライベート・エクイティ、不動産などの資産クラスである「オルタナティブ」の商品開発は、ここ数年資金流出に苦しんでいる資産運用会社にとって最重要分野になっている。

伝統的な株式よりも取引が難しく、流動性が低いオルタナティブは、歴史的に年金基金や寄付金といった大規模な機関投資家の領域だった。しかし、ブラックストーンが提供する不動産ファンドやクレジット・ファンドといったリテール向け商品の成功に触発され、資産運用会社は新たな資金源として富裕層投資家に目を向けている。いわゆるウェルス・チャネルは、2025年までに5,000億ドルから1兆3,000億ドルのオルタナティブ投資をもたらす可能性があると、マッキンゼーは2022年の調査で推定している。

しかし、こうした複雑な商品を理解し、市場に投入した経験のある営業担当者の確保に苦慮しているため、既存プレーヤーとの競争が難しくなり、各グループが頼りにしている成長そのものが鈍化している。

DWS のオルタナティブ部門グローバルヘッドで、Blackstone のクレジット事業の元最高執行責任者である Paul Kelly は、次のように述べる。「商品と顧客ベースを理解した適切なレベルの人材を確保するのは、より困難になっている」。

資産運用とファイナンシャル・プランニングやアドバイスを組み合わせたこのビジネスは、2021年の資産残高137兆ドルから、2030年には230兆ドル近くまで拡大すると予想されており、コンサルティング会社であるベインの言葉を借りると「富裕層をターゲットとするオルタナティブ投資商品に関するビジネスチャンスはとてつもなく大きい。」

一方、機関投資家への販売に慣れているオルタナティブ・プロバイダーにとって、富裕層チャネルへの売り込みは困難であることが明らかになっている。

フランクリン・テンプルトンのジェニー・ジョンソン最高経営責任者(CEO)が言うには「ウェルス・チャネルでは、(販売は)ブロック・アンド・タックル・ゲームです。適切な商品を適切な手段で入手し、自社の営業部隊を教育しながら、各ゲートキーパーを説得し、自社のプラットフォームに導入する必要があります。そして最後は、各ファイナンシャル・アドバイザーにポートフォリオでの扱い方を教えながら、一騎打ちとなるのです」。

より実績のある企業には、ウェルス・マネージャーを教育した経験のある営業スタッフがおり、商品の販売をサポートしています。「Blackstoneの名誉のために言っておくと、彼らはそれを何年も続けてきたのです。」とジェニーは指摘する。

オルタナティブ市場を運営する CAIS の調査によると、ファイナンシャル・アドバイザーの85% が、来年はオルタナティブへの資産配分を増やしたいと考えている。ところがゴールドマン・サックスのアナリスト、アレクサンダー・ブロスタインによると「商品を理解し、多くの教育を行う強力な営業担当者が足りていない」と言う。「伝統的な運用会社や投資信託の営業部隊は、この商品を長く販売してきた人ができるような仕事をこなせるだけの十分な能力を持っていない。」

オルタナティヴにも熟練した営業マンは存在するが、その多くはブラックストーンのような人気商品を扱う大手運用会社である、と経営陣は言う。営業職の給与も歩合制であるため、トップセールスの商品を持つ経験豊富なスタッフが退職するインセンティブはほとんどない。2023年の開始以来、Blackstone の610億ドルのプライベート・クレジット・ファンドには25億ドル以上が流入している。同ファンドは、2021年の運用開始以来、四半期ごとにプラスのネットフローを計上し続けてもいる。

DWSのケリー氏は言う: 「このようなファンドの数は決して多くはなく、現在存在する優秀な人材は、すでに大手のオルタナティブ運用会社で十分な利益を得ている」とDWSのケリー氏は言う。

ヘッドハンティング会社のセルビー・ジェニングスで投資運用のリクルーターを務めるニコラス・サグリンベンは、オルタナ運用のスペシャリストの報酬が上昇していると指摘する。特にプライベート・クレジットや不動産といった「ホット」な商品では、「IRやセールスの報酬は軒並み飛躍的に上昇している」と同氏は言う。

今週もご自愛ください。

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