クレジット市場の引き潮は想像以上?

なんとなく市場の方向性が掴みづらい日が続いてるような・・気がしますが、FTを眺めていると、「え?そうなの?」とハッとさせる記事に出逢います。今回はクレジット市場の話ですが、コロナをうまく乗り切ったように思えたクレジット市場にも変調の兆しが見えるようです。

FT記事:Financial engineering to be put on trial in bankruptcy courts より

米国企業の倒産弁護士は、突然、夏休みをキャンセルしなければならなくなるかもしれない。まあもっとも、少なくとも過去2年間はほとんど仕事がなかった状態だったので、それほど抵抗はないかも知れないが。

株式市場はこの一年退潮だが、資金調達環境は最近になって顕著にタイトになっている。その結果、資金繰り・サプライチェーンの逼迫に直面しているいくつかの企業は、過去10年のどの時点でも容易に流入していたはずの新たな救援資金を、そう簡単に調達することができなくなっている。

例えば流動性を失ったレブロン、スカンジナビア航空、ボイジャー・デジタルなどは、最近になって急遽、連邦破産法第11条の適用を申請することを余儀なくされた。これらの企業の裁判資料を見ると、いかに早く苦境に立たされたかが記されており、景気後退がどれほど急速に迫ってくるかを物語っている。

破産事件そのものについては、その多くが本質的な説得力を持つことは理解できる。そして、金融危機後の低金利は、あらゆる種類の金融工学を刺激し、暗号通貨の場合には、さらに新しい金融パラダイムを生み出した。このような技術革新の多くは、当時は十分に理解されていなかったが、現在では弁護士や裁判官と一緒になって解きほぐす必要がある。

5月末、S&Pが算出した不良債権比率は、追跡している企業信用証券の3%未満が米国債を10%以上、上回る利回りで取引されており、デフォルトリスクが高まっていることを示していた。それが7月第1週には、この比率は9%近くに達している。また、インターコンチネンタル取引所とバンク・オブ・アメリカが追跡している最も格付けの低いジャンク債の実効利回りは現在15%で、1年前の2倍以上になっている。

負債コストの上昇は、資本がいかに不足するようになったかを示している。複数の投資家は、最近、年率15%という途方もないコストで3億5000万ドルを有担保シニア・ローンの形で借りた通信ハードウエア企業のアバヤを指摘した。あるヘッジファンドの幹部は、最近リスク資産が幅広く売られているため、優良企業の債務には十分な混乱が生じており、残り滓に手を出す必要はほとんどない、と語った。

スウェーデンの航空会社SASはこの事を肌身に感じさせるイベントであろう。労働争議中の同社は、その後の資金調達や航空機の貸主との契約変更に応じることなく、突然ニューヨークで破産を申請した。破産を申請する企業は、このプロセスから速やかに撤退するために、(普通であれば事前に)債権者との取引に合意していることを好むことが多い、にも関わらずだ。

同様に、化粧品メーカーのレブロンが破産を申請したのは、債権者との法廷外取引の交渉が決裂し、取引先が問題を抱えた同社との取引をますますためらうようになったためである。

同社はコロナ禍の中で潰れるのを避けるために、2020年に$880mnの現金を調達していた。その新規融資には、「アップティア・エクスチェンジ」と呼ばれる取引で、異なるヘッジファンドを互いに競わせる結果を招いてしまった。この取引では、かつて最優先であった貸し手グループを、自分たちの債務より下に押し下げられる取引となる。このような仕組みは、法的には問題があるにせよ、高額の負債を抱える企業ではますます一般的になってきている。そして、その手法の妥当性を整理することが、レブロン社の倒産を解決するための障害となっている。

(以下省略)

それでは今週もご自愛下さい。

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