インデックス投資の新トレンドDirect Indexing

2021年1月9日付 FT紙 “Direct indexing allows investors to pick and mix”より

https://www.ft.com/content/609e1652-d12c-4aef-9656-80d284c1a1f1

最近の運用業界ではインデックス投資への資金流入額が増えておりますが、当然ながら凌ぎを削る激しい競争が繰り拡げられております。

State Street社だったかと思いますが、ETF事業を売りに出すニュースも報道されていた記憶しており、大手であっても手数料率の低下は悩ましい問題であるのでしょう(もっともState Streetの場合は中核業務のカストディビジネスに集中させるという、事業戦略上の理由も大きいかとおもいますが)。

その激しい競争の中で、運用会社はどのような手を打っていくのか。まずは動き出したのが業界最大手Blackrockでした。AperioというDirect Indexingの会社を買収しております。続いたのがMorgan Stanley。名門Eaton Vanceの買収を発表しておりますが、参加のParametricという約30兆円の運用資産を誇るDirect Indexingを得意とする会社を傘下に収めました。

ここで疑問に思うのは、Direct Indexingとは何か。どんなメリットがあるかという点です。

本記事の筆者Billy Naumanさんが実にわかりやすく書いていらっしゃるので、可能であれば原文をご覧いただきたいのですが、簡単に言いますとインデックス投資のカスタマイズ化です。

最近の計量分析の発展と、コンピューターによる大量の取引技術の進展がなせる技で、Naumanさんの例えをお借りすると「ブリトーの具やトッピングを自在に選択できる感じ」というとイメージが伝わりますでしょうか。

それだけ?と思うのですが、読み進めると中々奥が深い。例えば今話題のESG投資ですが、様々な基準があり、多様なインデックスが存在しているものの、機関投資家が洗練され自己の投資基準を明確にしていくほど、インデックス構成銘柄と相違が出てくる。Direct Indexingを使うと、合わない部分だけ構成銘柄を外せるようになる。

あるいは個人投資家などでもインデックス投資を行っている時に、評価損が出ている銘柄だけを売却し、他の実現益と相殺することで課税対象額を圧縮し、納税額を減らす、なんて事もできるようになるそうです。売却して減ったポジションは似たような銘柄を新規追加してポートフォリオの分散を保ったままにもしてくれる。

ロボアドサービスにも課税額を減らすために含み損を抱えているインデックスを売却してくれるサービスはあったかと思いますが、それよりも精緻な課税最小化取引ができるようになる。結構すごくないですか。

インデックス投資そのものがある種の情報コンテンツだとすると、それをカスタマイズして欲しい。CDアルバムのような固定された曲構成でなく、同じアーティストでもSpotifyが提供するプレイリストのように自分のお気に入りの曲だけ、好きな順番で演奏させたい。まさに投資の世界にもそんなコンテンツの編集機能を求めるユーザーの台頭を予感させる記事です。

よい一日を。

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