投資戦略

Ares Management Corporation: いぶし銀の魅力

いぶし銀の魅力

金属に硫黄のすすで曇りをつけることを意味し、キラキラとした光沢はなくなるが、その分渋みが増すことで味のある感じに仕上がる。ついてはその渋さから玄人好みするようなニュアンスを含んでいる

本日紹介するAres Management Corporation(以下Ares)は私にとってはそんな”いぶし銀”的な存在。昨年SMBCさんが出資されてことでも話題になりました。ほんと、いいところに目をつけましてしたねぇ、という感想。

クレジット投資に携わる方には有名な同社ですが、その他の分野の人には今一つの知名度(ごめんなさい!)。何よりも日本人泣かせなのはその社名かと。スペルを見ますと”アーレス”という発音におもえますが、”エアリーズ”に近いので会話の中で社名と一致しないことがままあります笑。

本日はそんなオルタナティブ投資業界のいぶし銀Aresに注目。

毎度のことですが、本稿は10-Kなどの公開資料に基づいて作成していますが、その正確性については保証しかねますことを予めお許し下さい。

Writer in Chief: Takashi Miura

Aresの特徴:規律を保った運用スタイル

Aresはクレジット分野に強みを持つオルタナティブ運用会社として知られていますが、スプレッドが縮小するクレジット市場の中でも収益性の維持に成功しています。我々が観察したところでは以下の4点が大きく貢献していると考えます。

  1. 案件ソーシング能力に優れており、高収益な資産を集める規模に運用規模をコントロールしていること
  2. 豊富なクレジット投資経験を活かして他戦略への拡張に成功している。PEの中でも業績悪化企業などに投資するスペシャル・オポチュニティーズに力を入れており、強みを活かした全体の戦略ストーリーが明快
  3. 顧客基盤が強固で、機関投資家を中心に着実に運用資金を取り込めている
  4. 規律を保った買収戦略が奏功し、運用資産の拡大を実現させている。

これから詳細に入っていきますが、改めて眺めてみますにAres経営陣の規律・適正規模を重視する姿勢を強く感じます。

同社の運用規模は200Blnドル程度と立派ではありますが、Blakstone, Carlyle, KKR, Apollo等に比べると一回り小さい。だけども現在の運用環境においては、良好なパフォーマンスを維持するための適正規模と考えているのではないでしょうか。メディアへの露出もそれほど多くなく、まさにオルタナ業界の”いぶし銀”にふさわしい存在。なんかいいなぁ。

沿革

AresはAntony Ressler, Michael Arougheti, David Kaplan, John H. Kissick, Bennett Rosenthalら中心となって1997年に創業されています。米国ロスアンゼルスが本拠地ですが、北米・欧州・アジアに拠点を持ち、2007年にはアブダビ投資庁の出資を受け入れています。そして2014年、NYSEにIPO。

同社は積極的な買収戦略を実施しており、2016年4月にはアメリカン・キャピタルを34億ドルでの買収を発表、2020年1月には香港拠点のSSGキャピタルを買収完了。

運用資産は過去5年間平均16%と高い伸びを記録していまして、2020年末では1,966億ドルに到達。言わずもがな、その成長源はクレジット投資と買収による資産増加で、同投資分野は5年間で2.4倍の1,454億ドルにまで成長しています。

図表1:AresのAUM推移

Ares AUM

ごらんの通りクレジット寄りの運用構成。2020年度では運用資産に占めるクレジットの割合は78%で、その他のPE(15%)、不動産(8%)などを大きく上回っています。ちょっと視覚的に表現を変えてみますと、こんな感じになります。(数字は運用規模Blnです)

AUM Pie Chart

投資分野ごとに眺めてみる

さて、全体を眺めたあとに各セグメントに入って参りますが、ことAresに限っては”クレジットを制するものはAresを制する”なんて言葉が浮かんで来るくらいの同社の基幹分野。まずはこれを分解してみましょう。

クレジットAUMの内訳(2020年・10億ドル)

Credit AUM

実は今回一番驚いたのはこのパイチャートだったんです。

Aresってこんなにダイレクト・レンディング中心だったんですね

直接貸付と表記しておりますのは、いわゆるダイレクト・レンディング戦略でしてプライベート・デットと呼ばれるオルタナティブ投資分野の一つです。Aresは米国発祥の企業ですよ!なのに欧州DLもこんなに運用していたとは・・・・。

米国と欧州のDLだけで全体の約7割を占め、シンジケートローンを加味するとプライマリー案件比率はクレジット投資分野の89%に達します。セカンダリー中心だったApolloと比べてみると非常に面白い。というか全然中身が違っています。

イメージではハイ・イールドの比率がもっと高いと思っていました。CLOとかもガンガンやっているイメージなんですよね。セカンダリー中心のイメージだったものがいい意味で裏切られました(注:DLで与信したローンのExitとしてCLO化している可能性は多々あります)。

時系列でもその推移を眺めておきます(クレジットAUMのアセットクラス別残高推移)

なるほど。こうしてみるとDL戦略の伸びは2017年頃から加速していたのですね。数値でみますに5年間平均伸び率で最も高いのが欧州直接貸付(36%)、次いで米国直接貸付(19%)となっておりまして、Aresが積極的にDLビジネスを伸ばしていることが分かります。

収益性という視点で眺めてみると

Aresを理解するにあたり、クレジットビジネスを理解することが同社の理解につながると感じていますが、まずはその資産規模が大きく伸びていることが分かりました。特にDL分野の伸びが顕著であり、プライマリー志向が非常に強い会社でもあります。

そして今度はそのクレジット分野を収益性という”ものさし”で眺めてみるとどうなるのか。実は収益性でみるとまた違った姿が浮き出てきたのです。

収益性でみると2018年までは米国・欧州DLへの流入が大きく貢献していますが、2019年からは実は伸び悩み傾向にありました。またハイ・イールドは一貫して残高を落としており、収益面での貢献は期待できず。一方で2017年から着実に収益貢献しているのはシンジケートローンオルタナティブ・クレジットでありました。

これは運用資産の伸びと併せて考えると非常に面白いですね。DL分野は競合も厳しいのでAresの業績を考える中で、収益面ではシンジケート・ローンとオルタナティブ・クレジットが注目ポイントです。

PE投資セグメント

当然のことながら大手オルタナティブ運用会社としてPE分野にも注力しています。冒頭にて触れましたがAresのPE分野における特徴は”クレジットの知見を活かした”PE投資とみえます。

クレジット分野に比べると小さいもののAUM約200Blnにおいて25Bln程度、約15%という規模感です。

約7割がコーポレートPEと称される一般的なバイアウト戦略と推察されますが、PE全体の運用額としては過去5年平均伸び率は4%とややパンチに欠けています。Brookfieldでも触れたインフラ戦略などは減少に転じており意外感。代わって業績悪化企業に対するマイノリティ出資などを行うスペシャル・オポチュニティズが高い伸び率を維持しておりまして、ここがAresらしい舞台と考えているのではないでしょうか。

時系列でみるとより分かりやすいですね。オレンジに注目。

これを収益性でみますと、こんな様子に。

これは良いグラフ笑。運用規模はともかく、収益性を考えるとスペシャル・オポを伸ばしていくに違いありません。経営陣の力点が見えてくる。

不動産投資セグメント

こちらもまずは視覚的に理解していきましょう。不動産AUMの内訳(2020年・10億ドル)

Aresの不動産運用はAUMに対して約8%といった所。それが3分野に区分されています。規模は小さいものの欧州・米国でバランス良くエクイティ投資を行いつつ、きちんとクレジットの知見を活かしたデット投資も行っておりバランスがいいですね。

念の為時系列で見ておきますと、このように。

うんうん、これもきれいです。おそらく社内でもメインストリームでないと分かりつつも不動産チームの皆さんの良識を感じます。そして投資家からもきちんと評価され着実に伸びている様子が伺えます。一応数字を挙げておきますと、不動産全体でのAUM残高の過去5年間の平均伸び率は8%。対して不動産デットの伸び率は17%と成長分野。欧州エクイティが9%で、やや過熱感があった米国は横ばいとなっています。

収益性も眺めておきますと2020年の欧州エクティの不振は意外ですが、トレンドとしては増加傾向にあるのではないでしょうか。特に2016年以降は事業体として独り立ちしつつある、そんな印象を受けます。

Ares全体の収益性

さて、これまで各投資セグメント毎に資産の伸びと収益性を眺めてきましたが、全体としてはどうなんでしょう。

答えから申し上げますと、営業収益における手数料収入が着実に増加しておりまして、その割合も60%前後と安定しておりとてもいい感じです。

青い線にご注目。当然ながらマネジメント・フィーは安定しており収益を安定化させつつ、2018年を除くと成功報酬もきちんと獲得出来ています。

部門別ROA(部門利益/AUM平残)をみてみますと、主力のクレジットは健闘しているものの低下圧力を感じますが、PEは健闘しておりまして、全体ROAは従来水準を維持しているようです。

投資家の動向

開示資料で目に留まったのは投資家の動向。ぜひこれにも触れておきたいと思います。

AUMの伸びを支えているのはグローバル機関投資家ですが、2020年末で7割を占める機関投資家経由の運用残高が過去5年平均で20%伸びているそうで、Ares全体の成長を支えています。(顧客セグメント別AUM推移)

さらにこの機関投資家の中でも伸びが大きいのが投資マネージャー(5年平均伸び率34%)及び保険会社(同28%)、銀行・PB(同25%)でして、低金利下でも高利回りを求める投資家の需要を着実に集めていると評価できます。これ面白いな。

機関投資家をさらに細かくブレイクダウンしてAUMの伸びを示してくださるのは大変有り難いです。同社をクレジット・マネージャーとひとくくりに考えてみますと、どの層からお金が流れてきているのか。特にDL戦略への資金提供者として眺めると更に味わいが増してきます。

おまけですが、2020年時点のスナップショットになるとこんな感じに。

大学や財団、そしてFOFでもなくAresに資金提供を拡大してきたのは年金銀行・PB経由の顧客だったのですね。これまた意外な結果に。

さてさて、今回はオルタナティブ運用業界のいぶし銀、Ares Management Corporationを取り上げました。しっかりと己の活動領域を見定め、強みを有する中核分野に徹する同社のスタイル。あらためて安心感を感じる運用会社だと思います。

それでは本日はここまでとさせて頂きます。皆様よい一日を。