投資戦略

Brookfieldの研究 Part5

ブルックフィールドを支える投資事業

今回でブルックフィールド特集も5回目。投資事業別に同社の強みに迫っていきます。

いつものように10-Kなどを中心とした公開情報を基に考察を行っていますが、データの正確性等については担保できませんこと、予めご了承ください。それではいつものように参りましょう。

Writer in Chief:Takashi Miura

最初に全体像から

4つの投資事業により構成されるブルックフィールドですが、全体としてどれくらいの収益を生み出しているのでしょうか。まずは投資事業から”どれくらい収益を稼いでいるか”という視点でFunds From Operation=FFOを眺めて見ます。

ん?FFOってどんな概念だ?って思われた方。こちらをご覧ください。

Funds from Operations (“FFO”). We define FFO as net income attributable to shareholders prior to fair value changes, depreciation and amortization, and deferred income taxes, and include realized disposition gains that are not recorded in net income as determined under IFRS. FFO also includes the company’s share of equity accounted investments’ FFO on a fully diluted basis. (中略)

We use FFO to assess our operating results and the value of Brookfield’s business and believe that many shareholders and analysts also find this measure of value to them.

同社HPから転記したものですが、事業会社におけるEBITDAみたいなものですかね(全然違うw)。

ひとまずファンド運営という事業形態を踏まえた”キャッシュ創出能力”ということで理解しておきましょう。

投資事業別のFFO推移

ブルックフィールドのFFO

びっくり・・・思ったよりインフラ投資部門の貢献って小さいんですね。

この特集を始めるまではブルックフィールドを”インフラ投資会社”と思い込んでおりました。つくづく先入観で語ってはいけないと猛省。少なくともFFOベースでは不動産PEにオークツリーを基盤としたアセマネ事業が同社の基盤と言えます。

投資部門ごとの資本投入額

先ほどはFFOを基準に眺めてみましたが、資本投資額でみると顕著に特徴が浮き彫りになります。投資部門別のCommon Equity投資額を開示資料から抜き出してみたのですが、大切な資本アロケーション先としてインフラ投資の優先度が低下していることが改めて確認できました。

セグメントごとの普通株

以前から不動産は6割以上を占める屋台骨でありましたが伸び率は鈍化中。アセットマネジメントはオークツリー買収に伴う新事業です。

屋台骨の不動産投資部門

不動産はブルックフィールドが投資する最も大きなアセットクラスです。投入した資本額"Common Equity"は2019年末で187億ドルに達しています。ただし投下した資本額に対してFFOは2017年をピークに減少中。これはコロナ禍以前の不動産価格上昇局面で投資が先行したことが影響していると思われます。

結果として投資リターンも低下しており、2019年には6.5%に下がっています。2021年1月に発表された非上場化もこうした利回り低下を反映したものでしょう。視覚で理解するとこんな感じになります。

不動産投資部門のFFO/Common Equity

不動産FFOと資本額の対比

不動産FFOとCommon Equityの利回り推移

2016年は開示が無かったのですが、直近はコロナの影響も大きい分野ですね。

再生可能エネルギー投資部門

どれくらいの発電量をもっているのか

この分野に関してはFFOやCommon Equityなどを見る前に、まずはどれくらいの発電能力を保有しているか理解して頂きたいと思います。

Brookfieldの再生可能エネルギー事業

再生可能エネルギー部門における発電力

これ単位がGW/hなんですよ。全部で25テラワット/時間の能力を保有している。ちょっとデータが古いので恐縮ですが、2015年度の日本全土における再生エネルギーの年間推計発電量が約75テラワット/時間。ブルックフィールドだけで日本の3分の1に相当する発電能力を保有しているんです。これはすごい!

再生可能エネルギー部門のFFO

FFOでみると水力発電が全体の約7割。最近は風力や太陽光が伸びています。

再生エネルギー部門のFFO

再生エネルギー部門のFFO推移

会計上の調整勘定が毎年$170-330mmぐらいあるのですが、FFOに対するブルックフィールドの持ち分は以下になります。

再生エネルギーFFOに対する持ち分

再生エネルギーFFOに対する持ち分

インフラ投資部門

他部門が急激に成長するブルックフィールドからすると、ややマイナーな投資分野となりつつあるインフラ投資事業ですが、業界のリーダーであることは変わりません。まずはFFOとそれを可能にする資本額=Common Equityを眺めてみます。

インフラ部門のFFO

インフラ部門のFFOとCommon Equityの関係

インフラ部門のFFO

ちょっと分かりづらいのですが、FFOが伸び悩んでいます。このFFOを要因分解してみると、

インフラFFO要因分析

インフラ投資部門におけるFFOの構成要因

全社と表現されマイナスになっているのは会計調整勘定ですので、あまり気になさらないでください。

大きな変化はなさそうに見えますが、よく見るとエネルギー・データインフラの伸びに気づきます。面白いのはこの投資事業の投資リターンが思ったより高いんですよ。

インフラ部門の投資リターン

インフラ事業の投資リターン

インフラ事業の投資リターン

プライベートエクイティ投資部門

活況な市場を反映しプライベートエクイティ投資部門の業績が好調です。FFOベースでは不動産に続いて2番目に部門に成長しています。

PE部門のFFOとCommon Equity

PE部門のFFOとCommon Equity

ちょっと込み入った話で恐縮ですが、上記FFOにはPE投資事業に加えて、”Norbord”や”Other Investments”と呼ばれるPE投資事業以外から獲得したFFOが含まれています。

PE投資事業のFFO

そこで純粋にPE投資事業単体のFFOを要素分解してみたところ、面白い姿が見えてきました。

PE部門のFFO構成要素

PE部門のFFO構成要素

どうですか?PE投資事業の伸びが見えやすく、どんな分野に力を入れているのか分かりますよね。

インフラ投資の知見を活かして関連サービスプロバイダーに投資する”インフラストラクチャー・サービス”をうまく伸ばしつつ、一般工業関係に投資を広げている。そしてBtoBのビジネスサービスにも水平展開。ざっとみたところBtoC向けのサービスなどは少なそうです。

こんな所にもブルックフィールドのエッジを感じます。さてここからは再び事業セグメント全体のFFO、Common Equityに基準を戻して説明します。

PE投資事業の投資リターン

PE部門のリターン

PE部門のリターン

こちらは好調な株式市場を反映して絶好調。

住宅開発部門

実はここはブルックフィールドが悩んでいる事業のひとつ。住宅開発のFFOを見ると北米は黒字ですが、ブラジル等その他は赤字が続いているんです。

住宅部門のFFO

住宅開発部門のFFO

うーん、悩ましいですね。なにせ生まれがブラジルですから簡単に故郷を捨てる訳にはいかない(いや、そんな事はないか)。投資リターンをみても厳しい現状が伝わってきます。

住宅開発部門の投資リターン

住宅部門の投資リターン

住宅開発部門の投資リターン

北米も低下傾向にある点が気になります。不動産ファンドの非上場化に続く財務リストラの対象はここかも?

今回のまとめ

全体的にはすごく順調に見えるブルックフィールドですが、細かい点をみていけば

  • 不動産部門の伸び悩み
  • インフラ部門の貢献度の低下
  • 所帯は小さいけれど赤字を続けている住宅開発事業

このあたりのマイクロ・マネージメントが経営上の課題に見えます。

さて、最終回となる次回ではライバル会社AMP・マッコーリーと比較してみようと思います。

次回のみ会員限定公開とさせて頂きます。無料で登録できますのでお気軽にどうぞ。(2月26日追記:考え直して一般公開にしようと思います)

それでは良い1日を。

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