2021年2月8日付けFTより Hedge fund Marshall Wace seeks venture capital deals
上場前の会社に妙味あり
世界有数の規模を誇るヘッジファンドの老舗Marshall Waceですが、ヘルスケア業界の有望未公開企業に投資を行う「未上場企業投資ファンド」をスタートするとの記事がFT市況欄に出ております。
これまで520億ドルという資産を築き上げた同社でしたが、主戦場は上場市場であります。ところが有望企業が上場市場にデビューしてくるとバリュエーションが一気に高まってしまう、という現状を打破すべく、プライベート市場に打って出るという決断に至ったようです。
上場市場が”投資家で”混み合っている
状況を整理するとこんな姿が浮かんできました。
未上場と上場の間には依然として”Funding Gap”が存在しており、投資信託やヘッジファンドのお金が上場市場に溜まっていることで、上場市場で資産の奪い合い、つまりバリュエーションの急激な上昇が起きている。一歩そこから出てプライベート市場で先に投資を行っておき、上場以降のバリュエーション上昇を享受するという作戦。先行逃げ切り型、とも言えましょうか。
一方、事業会社の立場からしても、上場前から大手投資家がついているというのは良い宣伝材料になるようで、IPOには好材料。両者の親和性は高そうです。
先日もアクティビストの大御所Daniel Loeb氏が$300mmの未公開企業投資ファンドを立ち上げるという報道が出ておりましたが、ヘッジファンドの業界からもプライベート市場にお金が流れ出してますね。
バイオ・医療技術・生命科学が狙い
Marshall Waceの新戦略はバイオ・医療技術・生命科学分野における、6-24ヶ月以内に上場しそうな会社に投資を行うというかなりのレイトステージですが、それでもIPO後の公開市場で買うより割安、という判断なのでしょう。
伝統的なPE会社もVC投資を行う時代。そこにヘッジファンドも参入してくる。さらにはSPACを通じたお金も流入。ここから更にプライベート市場が熱くなりそうです。
追伸 今朝の日経報道であるように2020年は米国においても起業が過去最高になりました。コロナ禍も影響しているとは思いますが、脚光を浴びるスタートアップ事例が新しいチャレンジャーを呼び込むという循環が世界各国で生まれています。
産業構造の転換としても2020-2021は記憶に残る年になりそうです。
本日もよい1日を。