SPAC:欧州はアムステルダム市場から

2月17日付けFT記事 Rules and reputation help Amsterdam assume role of European Spac capital より

欧州でのSPACブームはアムステルダムから始まりそう

アメリカで大人気のSPAC。今年だけで143のSPACが上場し、その調達規模はなんと$42.7Bn。伝統的なIPOが同じ期間で$24Bnとのことですから、その勢いが伝わってきます。

先日はアジアでのSPAC上場に関する話題をお伝えしましたが、今日のFTは欧州での話題を伝えてくれています。アムステルダム市場で”少なくとも”5つのSPAC上場に向けて動いている様子。投資銀行界隈は大変な賑わいです。

Brexitの影響と法制度の問題

なぜロンドンでなく、アムステルダムで欧州SPACブームが咲こうとしているのか。それは単にBrexitのせい、と片付ける訳には参りません。

SPACにとって大切な法制度上の問題で(後述)ロンドン市場でなく、法規則の柔軟性と市場の信頼性の高さが評価されたアムステルダム市場が選ばれています。

金融取引の国外流出に悩む英国にとっては、地味なボディーブローが重なりますね。

”Reverse Takeover”が阻むロンドン上場

ロンドンでの上場を阻む要素は何か。それは買収に関する法規制でした。SPACは文字通り企業を買収する器でありますが、SPACによる企業買収が現地法で言うところの”Reverse Takeover”に該当するそう。

それに該当すると売買停止となり、案件の目論見書が公表されるまで無期限で停止が続いてしまう。仮にある投資家が買収に不賛同で、持株を売りたくても売れない状況になってしまう点が問題視されているのです。

この点がロンドン上場のネックとなり、アムステルダムが選ばれているという構図。法規制の重要な部分でありましょうから、明日変えます!という訳には参りません。ロンドン、苦しい・・・・。

カリスマたちのSPACもアムステルダムでスタート

前ウニクレディットCEOのJean Pierre MustierとLVMHの総帥Bernard ArnaultがSPACを立ち上げる報道も先日ありましたが、この二人も欧州の金融関連会社を買収するためにアムステルダムでの上場を選択する様です。

投資銀行家はこのようなコメントをFTに寄せています。

It’s a flexible, international jurisdiction and relatively straight forward place to list.

You have flexibility on the terms of the Spac to be able to replicate the US.

Nick Koemtzopoulos, Head of Emea Equity Capital Market at Credit Suisse on FT interview

アジアはSGX、欧州はアムステルダム

さて、こうして米国に続きSPACブームがアジアはSGX、欧州はアムステルダムで始まる構図が見えて参りました。

先日は英国株が割安というPEファンドのコメントが報道されていましたが、伝統的なバイアウト勢に先駆けて、SPAC勢が高いマルチプルでディールを攫っていくかもしれない。プライベート市場が一気に加熱してきそうなSPACの攻勢です。

あなたはどちらに資金を配分しますか?

今日もよい1日を。

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