今回はブラックストーンのもう一人のライバル、カーライルを掘り下げてみます
Writer in Chief: Takashi Miura
今回のまとめ
The Carlyle Group (以下”カーライル”)の足元の資産残高は伸び悩み気味。要因として投資実績の”不安定さ”があるのかもしれない
特にPE・実物資産への投資パフォーマンスにバラつきが大きい
業績の振れが大きい。2019年の当期利益は12億ドルと前年比大幅に増加したが、2016年、2018年の利益は大きく落ち込んでいる。投資利益の変動により業績が変動しやすい
預り資産/自己投資勘定倍率は30倍程度であり、大手3社では最も自己投資への依存度が低い。
はじめに
第3回はKKRとブラックストーンとの違いを比較しましたが、今回はトップ3のもう一角、カーライルを分析してみたいと思います。
意外だったのですが、自己投資比率は3社で一番低いものの、業績変動が大きい。
運用ファンドのパフォーマンスの波が大きく、そこに同社の悩みはあるのでは?と思わせる内容でした。
ファンド運用状況
カーライルの投資セグメントは、①PE ②実物資産 ③グローバルクレジット ④インベストメント・ソリューション 以上4つに区分されています。
預かり残高の推移
まずは預かり残高、いわゆるAUMの推移から。(出所は同社の10-Kです。以下同様)
意外にも過去5年間でみると、2015年以降の預り資産残高はあまり変化していません。
PEは年率6%で増加していますが、グローバルクレジット、インベストメント・ソリューションは意外にもマイナスなのですね。
資金の流出入
これも目で見るところから始めます。
ライバル2社と比べると金額が少なめで、年ごとのばらつきが大きい印象。
一貫して減少しているインベストメント・ソリューションを一旦脇においても、グロ-バルクレジットは流入超ですが、意外にも看板PE・実物資産は出入りが激しい状況。
収益性
まずはフィーを徴収できる資産がどれくらいあるか、いつもの考察から始めます。
実は、同社の業績を見るカギはここにあるのではないだろうか?
KKRやBSが8割前後で推移している「フィーを徴求できる資産」ですが、全体の57%から75%の間で推移しており、ライバルと比べる10-15%低い。この低さはどうしたものか。
ただし、誤解なきように強調しておきますが、2016年は57%にまで低下していますが、その後2018年には74%にまで回復しております。2019年も70%台を維持。持ち直していると言えます。
また、比較的コモディティ化が進むグローバル・クレジットやインベストメント・ソリューションの分野において、手数料率は低下傾向にあるとも想像します。
収益性
冒頭の「まとめ」でも指摘しましたが、年ごとに変動は大きめです。
2019年の当期利益は12億ドルと前年比大幅に増加していますが、2016年、2018年の利益は大きく落ち込んだのでした。これは、ファンド投資利益が大きく変動したことによると考えられます。
セグメント利益
投資セグメント別にみてみると、PEが安定して利益の多くを稼ぎ出しており、実物資産と共に収益への貢献度が高いですね。
グローバル・クレジット、インベストメント・ソリューションの利益貢献は最近では低くなっています。
クレジット部門の貢献度が高くなっているKKRと比較すると面白い所です。
繰り返してしまい恐縮ですが、3社比較をはっきりさせる意味でも申し上げます。
カーライルの業績は投資損益によって変動しやすい構造です。投資利益の振れ幅が大きく、非キャピタルゲイン収入がそれほど伸びていないことから、ライバル2社と比較すると業績の不安定性が解消されていないように思えます。
手数料と投資収益のバランス
預かり資産と自己投資の比較
カーライルの自己資金投資はそれほど大きくありません。預り資産/自己投資勘定倍率は30倍程度で、総投資額の3%程度しか自己投資していないことが分かります。やはり業績の変動は運営するファンドのパフォーマンス変動によるものだと考えられます。
バランスシートの堅牢性
自己投資資金については不足分を借入金で補う構造になっているようです。2017年の業績が好調だったことから純資産が積み上がり、直近ではDERは0.7倍程度にまで低下しています。
第4回はここまでとさせてください。
そして最終回、第5回では・・・・3社の違いを比較します
次回第5回でついに完結。各プレイヤーの違いに注目し、戦略としてどんな絵を何を描いているのか。
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それでは。