エネルギー業界 運命の判決

2021年1月12日付け FT紙特集 Will Shell case accelerate the shift to green energy?より

https://www.ft.com/content/04a0ab91-0853-4888-b3e3-fb0244181dc4

日本ではあまり報道されていないようですが、石油業界のみならず化石燃料を使う産業にとっては要チェックの記事をご紹介します。

この判決次第でエネルギー関連企業への見方が変わるかもしれない

オランダでShellを相手取った注目の裁判が行われており、その審判が今年5月26日に予定されています。

オランダは自国に低地に低地が多いこともあり、環境問題、特に地球温暖化には特別敏感な場所だと思います。そんな国で5年前に環境団体Urgendaが政府を相手取って提訴しており、2019年には裁判所より政府に対して1990年対比25%の温暖化ガス削減命令が出され、すでに政府が敗訴中。

そういう背景の中、注目すべき事案だと思います。大袈裟に言えば今後の石油をはじめとする化石燃料に関連する企業への味方を変えなければならい、私にとってはそう思えるほどのニュースでありました。

それはUrgendaが前回のように政府ではなく、企業を、具体的にはRoyal Dutch Shellを相手取って起こした訴訟です。それってよく環境保護団体が起こしている訴訟でしょう?と思われるかもしれませんが、今回のはかなり違います。

今までの訴訟はどちらかというと、過去の行いに対して賠償を請求するスタイルでした。Liablility型とでも申しましょうか。不作為によって被害を受けたので賠償してください、というスタイルでした。

今回の訴訟は未来型なんです。いわゆる”human rights-based cases”と記事では呼ばれていますが、環境破壊により将来的に人命を脅かす危険がある、という主張に基づき企業に対して将来的なビジネスモデルを規制しようという流れ。これから先の行動を制限しよう、というものなんです。

この訴訟で万一Shellが敗訴することがあれば、競合他社も予防的に行動を起こす、つまり既存化石事業を縮小し、クリーンエナジー化を加速させざるを得ないと専門家はみています。

Shellも2050年までに温暖化ガスの排出ネット・ゼロ化を宣言していますが、保護団体の主張では相殺しようが、ガスを大量排出している事そのものが問題だと容赦がありません。

昨年12月に公聴会が開かれておりますが、記事を拝見するとShell劣勢の様子。「もしこの訴訟に勝てば、初めてエネルギー企業の将来像を変えることができる」と保護団体の代表訴訟人コメント。

この訴訟をきっかけに様々な法廷闘争が起こるかもしれない。それは過去の不作為に対する賠償ではなく、将来的に温暖化ガスを排出させないという未来志向の訴訟。エネルギーあるいは関連工業のビジネスモデルを大きく揺さぶる訴訟だと思われます。

ヨーロッパを中心に環境保護団体の法廷戦術は益々高度化し、世論の支持も相まって、油価以上にエネルギー関連企業にとってのリスク・ファクターとして顕在化してきています。もちろん東日本大震災以降、石化エネルギーへの依存度が高まった我が国にとっても要注意のニュースでありましょう。

本日も良い一日を。

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