2021年2月12日付けFT紙より A tech investor doing God’s work
昨年注目を集めた運用会社と言えばARK Investment
たった一年でAUMを$3bnから$60Bnに伸ばした運用会社。Teslaを始めとするテクノロジー企業への投資で注目を集め、リテール層を中心に幅広い支持を獲得しています。
”投資界のジャンヌ・ダルク”にも例えられる同社のCEO, Cathie Woodさんのインタビュー記事を本日は取り上げてみます。
彼女は$23bnを誇る同社のフラッグシップファンド、Ark investment innovation fundのポートフォリオマネージャーでもあります。
“Invest with conviction”と寄付の精神
ミレニアムを中心にファンを引きつけるのは彼女の揺るがない投資哲学。”確信をもって投資を行い”、そして利益の一部を寄付に回していく姿勢が共感のポイントに思えます。
懐疑派は”自己アピールのうまさ”と”あふれるほどの流動性を供給するマニアのおかげ”と批判しますが、顔が見えるポートフォリオマネージャーとして彼女の大きな存在は否定できないでしょう。
さらにArk社のウェブナーで彼女はこう述べています。”運用会社とアドバイザーはポートフォリオの中に存在するイノベーションを見逃し続けてきた” ”ようやくイノベーションの存在が認められつつある”
未来を変えるテクノロジー企業の存在を価値を強く信じ続けてきた彼女の行動と言葉がようやく認知されてきた、という想いが伝わってきますね。
聖書と投資
Book of Exodusに描かれるTen Commandmentsが収められる”聖櫃”が語源となったARK。その強い宗教心は彼女の人生と一致します。
今年で65歳になるアイルランド移民にルーツを持つ彼女は敬虔なクリスチャンであり、いまでもコーヒーを淹れている間に聖書を読んでいるそう。
その40年に及ぶ投資人生の中で多くのアップダウンを経験していますが、”Each of those times was a time of deepening my faith.”と表現しています。なんともいい感じの熟成感を感じますね。さらにインタビューを読んでいて、おおっ!と思ったのは大学時代の恩師が、Arthur Laffer。あのラッファー曲線の提唱者じゃないですか!
レーガン時代に活力を与えたフラット税の理論的支柱となった存在が、彼女をキャピタル・グループ入社へ紹介しています。それからNYに移住し、Jennison Associatesに入社。エクイティ・ポートフォリオマネージャーとしてのキャリアをスタート。当時は誰もカバーしたがらなかった、ロイターやテレレートなどのデータ提供企業カバレッジから始めます。
多くのテクノロジーは過小評価されている
このデータ企業たちが後のWorld Wide Web、つまりはインターネットにおいて大きく評価されるようになり、優れた企業がどれほど指数関数的に伸びていくのか、ということを肌身で感じた事が今のテック信奉につながっているようです。
そしてARK社を起業したのは2014年、彼女が58歳のとき。最初は自己資金だけで小さくスタートし、その後数年は苦しい経営が続いたが、それでも投資スタイルを変えることはなかった。破壊的な企業=disruptive companiesが未来をつくる、という信念の投資を貫いています。
彼女を一躍有名にしたのは2018年。テスラの株価が300ドル台だったときに”今後5年で4000ドルになる”という宣言を行い、多くを驚かせました。そして株式分割前の価値で800ドル台まで株価が上昇し、彼女をメディアの最前線に押し上げていく。その後のストーリーは皆が知るところに。
口さがない人は1990年台のテックブームに乗り、と2000年代のテック・バーストで凋落したJanus Twenty fundと同じだ、と揶揄する声もありますが、彼女にとってはこれまで超えてきた障害と同じに聞こえることでしょう。
It’s about allocating capital to God’s creation in the most innovative and creative way possible.
Cathie Wood interviewed by FT
宗教心に支えられた強い投資哲学が全くゆるぎを感じさせません。
本日もよい一日をお過ごしください。