Pearsonの自己変革

FT記事:Pearson’s digital education vision begins to clickより

FTの親会社でもあった教育コンテンツ提供会社のPearsonですが、Disney出身のCEOが着任して以来、着実に変わっているというのが今日の話題。こういう地味な会社(失礼!)が大きく評価を高めていくストーリーをご紹介します。

Pearsonといえば大学の教科書、はたまたCPA/CFAなどの資格試験で馴染みのある方も多いのではないでしょうか。分厚いテキストにCDが添付されているあのスタイル、です。

そこにDisney出身のCEOがやってきた時、一気にオンライン化に舵を切ることになります。着任する前は7度にわたる利益目標の引き下げ、下降する業績に悩まされてきた会社でしたが、明るい兆しが見えてきました。

今年前半は約18億ポンドの収益を計上。これは前年比6%+ではありましたが、株価は何と59%上昇。FTSE100のベストパフォーマー。この変革でのポイントは大学の教材提供メーカーでなく、「オンラインを中心に展開する学校から社会人まで、全ての人に教育を提供する」会社への転身にあります。

なんと、これは我が国でも議論が盛んな「リスキリング教育」のど真ん中を進む戦略ではないですか。これは世界共通の話題でもあり、課題でもありますね。

昨年から立ち上げたPearson Plusというサービス事例を挙げると、月額14.99ドルでPearson全ての教科書が見放題、ということで教育界のNetflix、Spotifyを狙うような立ち位置。いまや450万人が登録し、32万9千人が新しく加入したとのこと(差分は既存ユーザーが登録を変更)

面白いのはNetflixやSpotifyのように高額の費用をかけて新しいコンテンツをどんどん取得しなくてもいい点。曰く、教科書はあんまりイジるところがない。つまりは改善についてそれほどコスト付加がない点。なるほどー。

この地味だけど、教育界のNetflixの地位を窺うPearsonですが、出自を辿ると1800年代後半に生まれた建設業が祖業。そこからメディア事業を拡大してきた歴史を持ちます。そこから教科書・テキストの中古販売業が盛んになり、本そのものが売れなくなった。リカバリーに長い時間を要しましたが、復活の兆しを見せています。

このCEOのAndy Birdさんですが、面白いですよ。彼のビジョンはPearsonの知的コンテンツを統合して、会社従業員のスキルチェック・資格付与プログラムを作り上げること。スタートアップ企業と連携して、インプットだけでなく、アウトプット、さらに従業員の質そのものを評価して向上させていく教育プラットフォームを世界展開していく

それはリスキング教育の中のAmazon的な立ち位置にも見えてきます。どうです?ワクワクしてきませんか。

もちろん解決すべき問題も多数ありますが、それでも事業を新しい方向に導く意志と力。やはり企業はシステムでなく、人で動いていくのだとの思いを強くした話題です。

今週もご自愛ください。

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