EVの普及はファイナンスにあり

FT記事:Leasing deals hold back drive to electric vehiclesより

所有嗜好が強い日本人には少し馴染みがないかも知れないのですが、海外、例えば英国などでは新車販売10台あたり9台近くの購入が「リース形式」になっていることはご存知でしょうか。いわゆる購入代金から残価部分を差し引いた残りを支払う購入形式ですが、当然ながら所有よりも支払い金額は軽くなる特徴があります。

ここで重要なのが残価でして、その差額である減価償却という概念でもあります。内燃式の車ですと中古車市場などの価格データが揃っており、残価の見積りが容易なことから金融機関および自動車メーカー系列のリース会社が積極的にリースを提供してくれますが、本日の話題はEVにおいてリース金融の普及が遅れているという話題です。

皆様ご想像の通り2次、3次流通市場のデータが揃って来れば、リース利用の機会がグッと増えていき、本格的にEV到来という流れになっていくのでしょう。ここで重要なのは減価償却の大きさ・速さを如何に把握するかということでありますが、償却額が小さく、ゆっくりであればあるほどリース代金の支払いが小さくて済む、という等式にもつながります。

特にEVは可動部品が内燃に比べて少ないので、経常的な維持費用が内燃対比で5−6割で済む、というデータも見えてきました(ちなみに重量が重いので、タイヤの損耗は内燃より「少しだけ」早い・激しいそうです)。そして最大の注目は、価値物であるバッテリーの寿命をどのように見積もるか、という点にあります。

ちなみに内燃自動車向けリース金融はかなりのドル箱ビジネスでして、VWグループですと半年で30億ユーロ以上の利益を叩き出す美味しいビジネスとなっております。であるが故に、本体でEV生産に乗り出すとともに、リースビジネスを通じて「一粒で二度美味しい」ビジネスを作り出そうと躍起になる訳です。

記事にも取り上げられておりますが、「昨年イギリスでは約20万台のEVが販売された。これらは3年経たないと中古車市場に参入してこない」「我々はまだ5−6年後の価値について確証を得ていない」というのが現状。

ある実験ではバッテリーの性能保証について利用者は二千ドル以上のプレミアムを払うとの報告もなされています。まさにバッテリーを中心とした2次・3次流通市場が形成され出すタイミングで、リース金融が提供され、本格的な成長を迎えていくとの記事の内容。

叶わぬ願いとは思いつつ、本邦勤労者にもリース購入を通じた費用計上が認められる日がきますことを・・・・・・(あ、所得控除はそのままでお願いします笑)。

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