みなさんご存知の”賦課方式”を採用する我が国の公的年金ですが、少子化にあってもGPIFさんのおかげで将来の国民・厚生年金の支払いがしっかり守られていることはご存知かと思います。
その上で、さらに上乗せ=いわゆる三階建部分として提供されるのが確定給付型企業年金ですが、実は英国もDBが広く普及している国なんです。
その中で、金利が上昇することで年金債務が減少してくると、その機会にスポンサー企業が年金資産・債務まるごと保険会社等に売却する”年金バイアウト”案件が増加してくる。
引き受ける方もそれほど高い運用利回りが求められないので、サテライト的にプライベート投資を組み込み、運用差益を狙える”おいしい”取引となり、実はプライベート投資業界に流れ込む大きな資金フローの源泉が”保険マネー”と言うことになってます。
バブル期に日本の生保が”ザ・セイホ”と呼ばれていた時代を覚えている人はいるのかな。そんな時代を彷彿させる保険マネーの再来です。
FT記事: Why it’s a good time for your company to sell your pensionより
確定給付型年金(Defined Benefit pension)を手放すのは愚か者のすること――そう思う人も多いだろう。
それでも英国企業のいくつかは、この制度を抱え続けるよりも手放すことに積極的だ。実際、現在の環境を考えれば、彼らがこの好機を逃す理由はない。
英国の確定給付型年金制度を通じて、約1,050万人の従業員に総額1.5兆ポンドの将来支払いが約束されている。今週月曜日、Legal & Generalがフォードの英国年金制度2件を46億ポンドで買収したことは、この取引急増の最新例である。
ムーディーズによると、こうした年金バイアウトの取引総額は、これまでの年間300億ポンドから、2023年と2024年にはおよそ500億ポンド規模へと拡大した。
企業がこの波に乗るのは、金利上昇によって年金債務の「現在価値」が急速に縮小しているためだ。投資の見込み利回りよりも負債の割引効果が大きくなり、結果として企業は買い手に多額の「持参金(ダウリー)」を払わずに制度を手放すことができる。
売却案件があふれているにもかかわらず、そのダウリーの水準は金利低下が示す以上に縮小している。フォードのような個別取引を外部から評価するのはアクチュアリー(保険数理)知識がなければ難しい。しかし、こうした取引を追跡しているLCPによれば、企業側(年金スポンサー)にとって、これらの取引はますます価値を生むようになっているという。
その背景には、保険会社同士の激しい「縄張り争い」がある。
現在、Athora(アポロ傘下)が英国のPICを買収することで合意しており、Just GroupはBrookfieldとの合併を計画している。こうした動きの中で、少なくとも11社がこの市場で競い合っている状況だ。
保険会社には、アニュイティ(終身年金)型の契約を増やす正当な理由がある。巨額の資産を運用するコストは、少額を扱う場合とほとんど変わらない。また、一括して契約を獲得すれば、事業規模をすぐに拡大できる。
さらに、売却する側の企業は売りたいとは思っていても、時間的な制約がないため、交渉で比較的強い立場を取ることができる。
では、保険会社はどのようにして十分な利益を得るのか。
その答えは、集めた資金をより高利回りの資産に再投資することだ。
たとえば、エクイティリリース・モーゲージ(リバースモーゲージ)、インフラ債務、証券化商品、ダイレクト・レンディング(直接融資)などが挙げられる。
つまり、年金バイアウト取引の増加と、プライベート・クレジット市場の拡大とは、切っても切れない関係にあるのだ。
プライベート・クレジットに積極的に資金を投じるべき立場にあるのは、確かに保険会社だ。彼らの負債は超長期にわたっており、短期的な価格変動や流動性を気にする必要がない。とはいえ、非上場の信用商品は通常の社債よりも価格評価が難しく、プライベート資産のバブル懸念も広がっている。
しかし、年金を売却した企業にとって、そうした心配は無縁だ。
現状を見る限り、どうやら売り手のほうが得をしているように見える。
それでは良い週末をお過ごしください。