電力大手Orstedの憂鬱

FTコラムLexより:Orsted: yet another blow

引き続き注目を集める再生可能エネルギーですが、その主要電源ともいえる洋上風力のビッグプレイヤーであるオランダのOrsted社。ウクライナ危機が発生する前、世界が一気に脱化石燃料に傾きかけた時に最も輝いていた企業の一つです。さて、本日の話題はその巨人Orstedが随分と苦しんでいる現状を指摘したFT名物コラムに注目します。


記事より

再生可能エネルギーは地球にとって福音であることに間違いはない。だけども洋上風力のスペシャリストであるOrstedにとっては化石燃料市場に振り回されてきた年であった。

そのヘッジ取引も増大する建設コストを相殺に至っていない事も判明している。

有価証券の取引としてみると、そのオランダに籍をおく国際的企業は2022年決算の暫定的な見通しを発表しているが、同時に2023年の収益見通しも引き下げている。株価は発表当日に8.7%の下落を記録しており最高値であったDKr1,351近辺から半分の状況で推移している。

これは驚くには至らない。Orstedは一貫した高成長を約束された企業として高い評価プレミアムを享受してきた企業だ。だけでもコモディティ市場の変動性がその短期的な収益に影響を及ぼすことが明白になった。Orstedの企業価値EVは想定EBITDAの11.5倍という水準にあり、ロンドン市場に上場されている公益企業群(utility SSE)に対して約20%高い水準にある。

そんな中でコスト上昇が顕著であり、ニューヨークの洋上風力プロジェクトSunrise単体でも$375MMの減損が発生している(ちなみにOrstedの持分は約50%)。これは設置コストの増大が主な要因となっている。入札を経て獲得した924MWのプロジェクト(2019年10月に獲得)だが、建設許可は大きく後ずれしており、建設着工は来年(2024年)となる見通しだ。(ちなみに、電力の販売契約はおそらく低いコストを前提として締結されていると推測する。そしておそらくそのコストは現在25%上昇しているはず、とジェフリーズは推測)

この延長線で考えると問題は大きい。Orstedは米国の東海岸だけでも6つの洋上風力プロジェクトを競り落としている。それはSunriseを含んだ2018年以降の獲得である。それらのプロジェクトでは問題はないのかー例えばNew JerseyやMarylandのプロジェクトであるが、きっとSunriseと同じような減損を抱えるに違いない。

さらに、Orsted自身が認めている事がだが、ヨーロッパでの洋上風力発電において、発電総量に対して適切なヘッジ策を講じていないことも明らかになっている。投資家の期待値をコントロールすることは難しく、同社の株価に2019年8月以来の重石となっている。

グリーンエネルギーという期待を背負っているOrstedに対して、株主が報われるのはOrsted自身がプロジェクトのコスト管理とヘッジ策の実行を証明した時であろう。


日本でも洋上風力プロジェクトに積極的に関与するOrstedですが、思った以上に苦労していました。しかしながらコントロールすべき問題は明らかでもあります。ここをOrstedの経営陣がどう乗り切るか。そういう目で見るとニュースへの解像度がグッと上がる気がしますね。

それでは今週もご自愛ください。

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