2021年2月23日付FTコラムLEX Dyal /Sixth Street:Owl howlより
DyalとOwl Rockの合併に待った
先日のブログでもお伝えしましたが、SPACを通じてGP投資で有名なDyal Capitalとプライベート・デットの有力投資会社Owl Rockの合併が進んでおります。ところが、意外なところから待ったがかかりました。
それはOwl Rockのライバル会社、Sixth Streetによる「ちょっと待った」です。なぜ?ということになりますが、ここからファンド投資、特にGP投資の複雑性に焦点が当たります。
GP投資とは運用会社に対する投資
そんなの当たり前じゃないか、という気もしますが少し説明させてください。通常のファンド投資では運用会社GPが存在し、そこへの出資を通じてリターンを獲得します。その際、投資家はLPという立て付けになりますよね。
バイアウトなどファンドに出資すれば20-30%のIRRを超えることも珍しくないのですが、如何せんGPから成功報酬や運用報酬などが控除された結果でもあります。
また優れた投資スキルを持つGPが複数の戦略を運用している場合、そのひとつに投資するより複数の戦略にコミットしたほうが、よりそのGPのアルファを獲得できるとも思われますが、運用の管理・手間など考えると難しいですよね。
ファンドレイズのタイミング(ヴィンテージ)や資金管理の難しさをお感じになっているLP実務担当の方も多いと察します。
それを別の視点で捉え直し、ファンドへの出資ではなく、運用会社GPそのものへの出資をしたとすれば、経済効果としてどう違ってくると思われますか?
運用会社そのものに出資するという発想
GPたる運用会社そのものに出資する、つまりGPの一員になるとどうだろう?そうすれば成功報酬も享受できるし、ファンドのビンテージも気にせず、GPスキルそのものをマネタイズできるのでは?という発想にたどり着きます。
しかも事業会社への出資ですから、配当などを通じて安定した”インカム”も期待できそう。特に古参パートナーが引退する際に持ち分の引き取り手を探しているとすれば、それ買っちゃえばいいじゃん!というストーリーが生まれます。
更にそれを分散して投資していくと”優良なGPへの分散投資ポートフォリオ”が構築でき、成長を見込めるインカム戦略が出来上がるという寸法です。この投資分野が俗に言うGP Stake Investmentでして、その有力プレイヤーの一つがニューバーガー傘下のDyal Capitalでした。
ところが投資先にSixth Streetが入っていた
そして本題に戻ります。DyalのGP投資先にSixth Streetが入っていたのです。そのDyalがOwl Rockと合併してしまうと、Sixth Streetからすればライバル会社が自分の会社の株主になってしまう。これはいかん!ということで裁判所に合併中止の申し立てを行いました。
Sixth Streetの主張によれば、GP投資の際に締結した契約書上、利益相反を引き起こす本合併は阻止できるとのこと。
ファンドのみか、それとも会社全体なのか
ここで注目されるのはSixth Streetの主張が同社へ投資を行っているファンド、ビークルだけに限定されるのか、それともGP投資を運用するGP=Dyal Capital全体を拘束するものか、という論点です。
ここは裁判者の判断待ちとなりますが、業界関係者としては非常に興味深いですよね。
今後SPAC等を通じて運用会社も合従連衡が進む予想されますが、GP投資を通じて運用会社そのものへの持ち分・利害関係が複雑化していく中で、利益相反関係をどこまで慎重に考えていくべきか。
GP投資というマイナーではありますが注目される分野でのケース事例。オルタナ運用関係者としては目が話せません。
本日もよい1日を。