Ribbit Capital: ロビンフッドを支える投資家

2021年2月12日付FT紙 Robinhood IPO puts rescuer’s faith to the test より

一晩で10億ドルを調達

何かと話題にあがる個人向けオンライン証券会社Robinhood(以下”ロビンフッド”)ですが、GameStopなどの投機資金が一気に流入した影響で、決済機関から担保金の積み増しを要求されたことはご存知かと思います。

その時ロビンフッドが真っ先に連絡を取ったのがMicky Malka氏が率いるVC, Ribbit Capitalでした。このVCの名前をご存知でしたか?恥ずかしながら、私にとっては初見であります。しかしながら記事を読み進めると、やっぱり”味がある”。資本市場って深くておもしろいなぁ、と嬉しくなってしまいました。

数時間で追加投資を決定

ロビンフッドがMalka氏に連絡をとってから”数時間で”転換権付社債”convertible debt financing“にて資金提供を決定したのがRibbit Capital。それが嚆矢となり一晩で10億ドル以上の資金調達に成功。

これまで目立たない存在であった、リード投資家であるMalka氏に注目が集まります。まさに米国VC界のダイナミズムを象徴するかのような事例です。

Ribbit Capitalは$500mm投資

ロビンフッドはたった4日間で合計34億ドルもの追加調達を行いました。そのなかでRibbit Capitalの投資額は最大で、IPOの際には割引価格で社債を株式に転換できるという見返りを得ています。

今月後半に議会証言を求められるなど、ロビンフッドCEOのVlad Tenevさんと同社にとっては正念場ではありますが、高い認知度も含め有望企業であることは間違いないと思います。その側には電話一本でリード投資家になってくれる、心強い投資家がいたのです。

それにしてもRibbit Capitalとベネズエラ国籍の投資家、Micky Malkaさんってどんな人なのでしょうか。

80年台の石油価格下落で学んだ教訓

どうやらMalkaさんの投資家としての転機は1980年台の石油価格下落にあったようです。記事の表現を借りれば”お金の需要と供給、そしてお金の流れを通じて本質を理解をした”熟練の投資家。

ただし、投資のタネを見つける才覚には溢れていたが、道のりは決して平坦ではなかった。

2013年に最初のファンドを立ち上げ、暗号資産”cryptocurrency”への初期投資家としてスタートしたものの、その過程では社会的批判に晒された英国ベンチャー企業Wongaなどの取締役などで苦労を重ねている。

友人と起こした会社、Bling Nationをシリコン・バレーで2007年に創業した時にも非常に冷たい目で見られていたそう。VC業務もスタートしたものの、現在注目を集めるロビンフッドへの初投資は2014年のことで遅咲きと言えます。

世界観に共感

この突然注目を集めたMelkaさんとRibbit Capitalですが、興味本意で同社のHPをのぞいてみたところ、印象がだいぶ変わりました。

シンプルでいいんですよ、特にこのMantraがすごくいい。Malkaさんの世界観が凝縮されている。

特に気に入っているのがこの部分

This we believe:

  1. We believe the unstoppable movement of consumers and business owners to mobile will resound in financial services for decades to come.
  2. We believe change favors new entrants and their new brands.
  3. We believe that legacy players will lag and sputter.
  4. We believe consumers are ready to be inspired.

And just like newspapers, travel agents, hotels and taxi companies have been turned upside down from outside the cozy confines of their industries, don’t expect banks to lead us out of the warp. They’ve proven themselves either unable to create internal environments where innovation can flourish – or simply unwilling to change even though it’s best for their customers.

Mantra-Ribbit Capital

既存のプレイヤーにとっては辛辣かも知れませんが、共感できる方も多いのではないでしょうか。

大真面目なんだけど面白い

Ribbitってどういう意味だろうと辞書を引いてみると、カエルの鳴き声の”ケロケロ”という意味だそう。これを社名にするとは笑。だからTEAMの写真の中にこれがあることに納得。”Our Jedi-我々のジェダイ”

ユーモア溢れる同社ですが、先の世界観を反映した投資ポートフォリオは大真面目です。ロビンフッドだけでないFintechの未来が浮かんでくるかのよう。

そして気づいてしまいました。”Our Investments”ではなく”Our Bets”になっていることに。嗚呼、素晴らしきかなユーモア溢れるVC業界。

本日もよい1日を。

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