2021年2月5日付けFTより Silver Lake’s AMC trade proves a triumph
舞台の陰で利益を確定する
掲示板Redditから始まった今回の騒動。GameStopやAMCなどの株価変動がクローズアップされ、個人投資家VSヘッジファンドという構図に、議会まで巻き込み大きな社会問題となりました。その騒動の渦中で”こっそり”利益を確定しているプレイヤーに注目します。
ショートをしていたMelvinなど損失を受けたプレイヤーは大きく報道されましたが、勝者に関する報道は少なかった。そこにFTは切り込み、Silever LakeとMudrick Capitalの勝利を掘り下げて報道しています。
Silver LakeとApolloの戦い
まずは結果から申しますとSilver Lakeは先週金曜日にAMCの株式を売却し＄113MMを確定しました。あれ？株持ってたの？という素直な疑問が浮かんできますが、その裏には随分と複雑な経緯と交渉があったのです。
コロナ禍以降、毎月＄100MMも現金を流出させてきたAMC。一昨年から水面下で同社のファイナンスをめぐってSilver LakeとApolloが激しいつば競り合いを繰り広げておりました。
取締役会に提案を突き刺したのはSilever Lake。勝負所を制し＄600MMの社債を引き受ける所から始まります。しかし、後々Silver Lakeを悩ませる事になるこの債券。Unsecuredだったのです。
コロナ禍が想定以上に拡大し、去年の5月、6月は劣後債が30セントを切り、シニア債が60セント台と価格が低迷、Silver Lakeの危機感が高まります。担当者絶対絶命。
Apolloの逆襲
その状況で再び登場するのが、前回破れたApollo。債権者でありました。
新しい資金調達を提案しSilver Lakeの債券が大きく棄損し得る提案を行いますが、経営陣と株主は破産を誘発し（債権者に）経営権を掌握されうる提案だ、と拒絶します。
そこでSilver Lakeがシニア債券を＄100MM新たに引き受け、20億ドルあった債務の15億ドル分を高いクーポンにして、満期を延長させます。そして自ら保有していた＄600MMの転換社債をシニアと同じ弁済順位に引き上げました。
弱っている会社にお金を投入し、金利は高くするから、満期を伸ばしてね、という方法で資金繰りを緩める事に成功。
取締役会に対する掌握力を見せつけた
Silver Lakeの行動はナンピン的ではあるけれども、債務の弁済順位を引き上げて対応するという一般的な”気合を感じさせる”行動ではありますが、記事を読むと驚きます。
取締役会は他債務のコベナンツが理由で、当時は＄600MMのシニア債券発行枠しかなかった。つまり新規発行できる枠をすべてSilver Lakeのために使ってシニアに格上げしたのです。これには銀行をはじめとする債務者から相当な抗議があったそう。ものすごいパワープレイですね。
状況は更に悪化したが
そしてコロナ禍が更に深刻になっていく。AMCの倒産やむなしの声が日増しに高まっていく中で、AMCが気合の追加資金調達を行います。ここはブログで触れた所ですね。そこで一息ついたところにReddit騒動です。
この機を逃してたまるか！と転換社債を株に換え、Silver Lakeは市場ですかさず売却したのでした。転換価格＠13.51に対して、売却価格＠16.05。合計＄113MMの利益確定。
その後、20ドル以上をつけたAMC株は8ドル以下に沈んだのでした。
Silver Lakeの担当者の方、ひとまずお疲れ様でした。おそらく去年の夏以降、生きた心地がしなかったでしょうw。その精神力とチャンスを逃さない胆力に敬意を表します。
今日もよい一日を。