オルタナティブ投資業界に独禁法が適用される日

ためていたFTを週末パラパラめくっていると、ドキッとする記事にあたるというのが最近のマイ・トレンド?なのですが、名物コラムLEXに書かれていた私の古巣の話と相まって、はたと業界の行末を考えてしまいました。

つまるところオルタナティブ投資は業界のメインストリートになるか、という話でもありましょう。これまで日陰の存在であったオルタナティブ投資に脚光があたり、そして大手プレイヤーがどんどん巨大化していく傾向に。

FT誌面をぼんやり眺めていると「これってこのまま放っておいていいの?」という独禁法上の議論が”燻り出している”気がします。

確かに投資家の方からするとマネージャー自身のDDは一発で済むので、あとは投資戦略毎のDDに注力したい、というニーズがあり、ついつい大手にアロケーションが寄ってしまう、ということはあろうかと思います。

ウチは人が余っているのですよ、なんて言葉はついぞ聞いた事がなく、むしろよくその人数でリアップと新規回してますね!!とスタッフの少なさに驚く事が多いのが実務の姿。ポートフォリオを広げたいけど広げられない、という思いは世界共通なのでしょう。そんな状況の中で、この話題です。


FTコラムLEX:Alternative M&A:try to concentrateより

記事概要

米国では独占禁止法の観点からプライベートエクイティ運用会社の投資先に関する合併に対して神経を尖らせる規制当局ではあるが、ついに運用会社そのものの合併にも異議を唱える日がやってくるのだろうか。

この質問はTPGが27億ドルの現金と株式を用いて買収したクレジット・不動産のスペシャリスト、アンジェロ・ゴードンとの合併において浮かび上ってきた。

年金基金やSWFからはPEだけでなくクレジットや不動産など各種アロケーションの際に、できるかぎり”ワン・ストップ”で手続きを行いたいとの声が強まる中で、TPGはBlackstoneやApolloに追いつく手段としてAGとの合併を選択した。

投資家のDD能力に限界がある以上、プライベート資産内において分散投資を可能にする大手運用会社への選好を強めることは十分に理解できる。そして上場している運用会社であれば資産規模の拡大は管理・成功報酬への増大に繋がることにもなるだろう。

成長の手段は買収だけでないものの、小さいチームを外部から雇った上で成長させるとか、あるいは社内で有機的に別チームを成長させる手もあろうが時間がかかるし、トラックレコード形成まで様々な困難も予想される。

よってここにきて視点を変えれば、従来の伝統的(パブリック投資中心の)運用会社からすれば、TPGやCarlyleグループの約4000億ドルという資産規模ですら、まだまだ小さいものであり、特にBlackrockやFidelity、その他SWFなどの巨大投資家からするとオルタナティブ投資業界の急激な成長をとらえる格好の機会かもしれない。

ここにきて投資運用業界において独禁法上の論点が急速に浮上してくる可能性がある。


まだまだ金融業界の中ではマイナーな存在、それが今のオルタナティブ投資領域だと思います。だけども、成長性そして収益性がグンと高い分野です。注目が集まることで規制も強くなるのが業界の必定。成長と規制の駆け引きのスタートです。

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