少子高齢化という”福音”

いつもは辛口のコラムが目立つ?FT日本特派員であるLeo Lewisさんのコラムですが、なるほど!と膝を打ったのは少子・高齢化によって失業の懸念がなくなり、企業が余剰部門を整理・統合しやすくなったとの視点。

これを2010年代生まれがリードすることで、日本は”買いでしょ!”という流れに。悲観論に負けない視点に感謝です。


FT記事:Japan’s demographics are screaming “buy”より

高齢化が進む日本は、地下の配管に問題を抱えている。日本の水道管は74万キロメートルにも及び、その5分の1強が40年の法定耐用年数を過ぎている。

水道管が老朽化し、漏水するにつれて、国の水道技術者たちは年を重ね、作業に対応できなくなってしまってしている。人口が減少する中、水道業界で働く日本人の数はピーク時の36%も減少しており、現在の作業速度で全ネットワークを入れ替えるには150年かかる計算になり、その間、事態は厄介なことになりかねない。

そんな中で、東京都、首相、金融業界は、前例のない「ジャパン・ウィークス」キャンペーンを開催し、世界の投資家たちに株式と信頼で資金を満たすよう呼びかけている。

世界的なファンドが中国離れに舵を切ったとはいえ、日本は見かけよりずっと難しい国だ。外国人の関心は非常に高いが、世界最速で高齢化が進む主要国の経済的将来に対する疑問から、グローバルファンドは大きな賭けに出ていない。この国のウォッシュレットは輝かしい産業賛歌を歌うかもしれないが、その下の錆びついたパイプは止むことのない衰退の悲哀を歌っている。

しかし、投資家によるこのためらいは、大きな機会損失かもしれない。日本の人口動態は、社会経済的な苦悩はあるにせよ、ここ数十年で間違いなく最大の「買い」シグナルとなっている。

これはいずれも日本が老後に直面する根本的な問題を否定するものではない。高齢化が進み、人口が減少していく中国は、日本経済の軌道を決定する重要な要因となり、そのリーダーシップがますます厳しく試されることになる。日本はこのプロセスをはるかに高い富の水準でスタートさせ、同じ課題の多くに極めて脆弱であり、国内総生産の263%に相当する借金をし、その第一波を食い止める手助けをしてきた。

しかし、いくつかの批判的な人々にとって、日本の人口動態は企業や投資家にとって有利に働いている。その第一は労働力不足と、労働力不足が企業のリストラに与える心理的な影響である。1980年代のバブル崩壊後、政府は大量の失業に怯え、企業は税制上の優遇措置によって、収益性や機動性が損なわれても従業員を確保するよう誘導された。厳格な労働法は、解雇を非常に難しくすることで負担を倍増させた。

この最も顕著な結果のひとつは企業が余剰人員を保管するために部門や事業を創設しなければならなかったことである。投資家は、そして最近では企業も、当時の企業の政治的期待に応えるために作られた非中核事業の膨大なポートフォリオを非難している。

CLSA証券のアナリストによれば、労働力の過剰が急速に解消されるにつれて、そのような義務は解消され、企業は突然そのような歴史から切り離され、非中核的なものをすべて売却し、代わりに自社の最も得意とすることに集中できるようになる。人口動態が基本的な原動力となっているこのような売却は、産業と金融の買収のための選び放題のビュッフェのように見える。

これと密接に関連しているのは、日本企業が、世界レベルに通用する国内大手企業の在庫・資産を減少させるような国内合併・統合に最終的に乗り出すという見通しである。国内のM&Aは、大規模な人員削減を引き起こすのではないかという懸念から、歴史的に停滞していた。

SMBC日興証券のストラテジストである安田光氏は、日本の目先の将来において、おそらくはるかに大きな人口ボーナスをもたらすのは、あまり考慮されることのない分野、つまり日本の若者への差し迫ったパワーシフトと、今後数年間で日本企業を一変させるであろう世代間の考え方の変化である、と主張する。

重要なのは1981年から2000年の間に生まれた世代であり、彼らが30代から40代になり、経済の屋台骨を形成するときに何が起こるかである、と安田氏はレポートの中で述べている。日本の「ブーマー」世代と「バブル」世代は、日本の最も熱狂的なピークを経験したが、その後の「失われた」数十年や、株価や不動産評価の停滞も経験したと安田氏は言う。

一方、2010年代に社会人になったいわゆるゆとり世代は、3つのまったく新しい世界観に恵まれている。年功序列や終身雇用に馴染みがないこと、他の世代には馴染みのないデジタル化が進んでいること、そして貯蓄の効果的な運用方法を考える中で、日本株が右肩上がりで高値を更新していくのを見てきたことだ。

日本の水道管は老朽化しているかもしれないが、日本の投資パイプラインは極めて健全である。


今週もご自愛ください。

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